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2014年に未曾有の大混雑となったフィリピン・マニラ港は今

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シニア・コンサルタント

浅井 俊一

日通総研ニュースレター ろじたす 第23回ー①(2017年3月21日号 )

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【Global Report】2014年に未曾有の大混雑となったフィリピン・マニラ港は今

昨年夏に就任したドゥテルテ大統領の過激な言動が注目を集め、安倍首相が今年最初の外遊先に選んだフィリピン。そのフィリピン最大の港湾マニラ港では2014年に未曾有の大混雑が発生、現地の日系企業・物流事業者が対応に追われましたが、その後どうなっているのでしょうか。

大混雑の原因は、2014年2月に実施されたトラックの市内通行規制強化です。空コンテナを積んだトラックは、昼間(6:00~21:00)マニラ市内の走行を禁止され、走れる道路も限定されました。この規制は、市内の渋滞緩和を目的としてマニラ市が独自に実施したものですが、貿易構造が大幅な輸入超過となっているフィリピンでは、コンテナ保管スペースの確保が課題となっており、規制が実施されてから港でコンテナが滞留、さらには船も接岸できず大量の沖待ちが発生。企業の生産活動や国民生活に支障を来し、結局、同年9月にこの規制は解除されました。

その後も、ローマ法王のフィリピン訪問(フィリピンはASEAN唯一のキリスト教国)に伴う交通規制強化等もあって、しばらく混雑・混乱が続き、2015年3月頃にようやく収束・沈静化しました。
昨年11月下旬にマニラ港の国際コンテナターミナルMICT:Manila International Container Terminalを視察したところ、ターミナル内でとくに目立った混雑・狭隘化は確認できず、ゲート前にも順番待ち車両の列はみられませんでした(もっとも、視察したのがオフピークの月曜午前だったからということもあります)。
しかし、マニラ市内からMICTターミナルへのアクセス道路は1本のみで、一般通行車両との共用のため交通渋滞が激しくなっています。また、港の手前には両側が不法居住区(いわゆるスラム街)となっている区間があり(写真参照)、放置車両も多いため片側1車線しか利用できず、安全面も含め通行に支障が生じています。

写真:アクセス道路沿線のスラム街

混雑当時はトラックドライバーによるストライキが発生、トラック料金が高騰し、現在も港湾混雑前よりも高い水準となっています。市内道路では現在も激しい道路渋滞が発生しており、大型トラックの通行規制(6:00~10:00、17:00~22:00は通行不可)は継続して実施されているため、マニラ市内経由でマニラ港まで行くのに長時間かかる状況に変わりありません。 また、当時は航空による緊急代替輸送に動いた企業も多く、この特需でニノイ・アキノ国際空港(マニラ国際空港)でも貨物量が急増し、大混雑となりました。昨年11月下旬に空港貨物上屋を視察したところ、かなり老朽化が進んでおり、取扱貨物量が落ち着いても手狭な印象を受けました。また、ゲート前では順番待ち車両の長い列がみられました。

図:マニラ港へのアクセス改善計画
出所:Googleマップより筆者作成

マニラ南部には免税等の優遇措置が受けられる特別経済区が多数設置され、日系企業も進出・集積しています。このマニラ南部では、①インランドコンテナデポを整備、港まで鉄道輸送を行う計画や、②バージ・RORO船ターミナルを整備してマニラ港までの海上アクセスを可能とする計画があります(図参照)。フィリピンでは計画はあっても資金の手当てがつかず、なかなか実行されないことが多いようですが、これらの計画が実現すれば道路混雑の緩和、アクセス利便性の向上や輸送の効率化につながりそうです。ドゥテルテ政権による、交通・物流インフラ整備への積極投資に期待がかかります。

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