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東アフリカのコールドチェーン事情~花き輸出の裏側~

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シニア・コンサルタント

綿貫 麻衣香

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日本国内では季節のイベント(3月の卒業関連とお彼岸、5月の母の日、8,9月のお盆とお彼岸並びに年末である12月など)に合わせて生花の需要が高まります。実はアフリカから多くの生花が航空貨物として日本にも輸入されています。生花は繊細で温度管理が必須となるため、遠いアフリカの農園から世界に生花を届けるため、コールドチェーンが欠かせません。東アフリカ内のコールドチェーンは今どのような状況なのでしょうか。

オランダの花き卸売市場が世界の花の取引で有名ですが、その市場に並ぶ切り花には東アフリカ産の切り花が数多くあるのです。東アフリカは切り花の輸出がとても盛んであることはあまり知られていないかもしれません。2018年の輸出金額ではケニアは世界第4位($575 million (シェア6.4%))、エチオピアは第5位($230.7 million (シェア2.6%))を誇ります1 。 日本はケニアからバラ等を809トン、エチオピアから344トン輸入(2019年)しており、日本にとってケニアはバラ輸入の最大貿易相手国となっています2

東アフリカからオランダの卸市場に出品されるまでの鮮度管理は農園から始まり、市場に並ぶまで一定に保たれるかどうかが花の価値を左右します。鮮度を保つには、保冷状態で温度変化を最小限にすること、つまりシームレスなコールドチェーンの確立が重要となります。農園から始まる搬送、輸送に係るコールドチェーンが東アフリカの質の高い花き輸出を支えています。今回はケニアのバラ輸出の例を紹介します。

花き農園内の摘み取り直後のプロセスからコールドチェーンは始まります。花き農園内では、花が摘み取られてから約48時間以内に農園を出荷するそうです。切り取ってからの劣化を最小限に抑えるため、時間はもちろん48時間以内の温度管理が重要になります。出荷するまでの工程で利用する冷蔵施設は、2度~6度程度内で管理されています。

バラは切り取られるとまず冷蔵庫に運ばれ、数時間蔵置されます。これは、切り取られた後も花が成長を続けるため、その成長を止める役割を果たします。この冷却期間が終わると出荷のための等級決定作業、バンドリング作業となりますが、人が細かい作業を行う作業場はほぼ常温のため、作業を手早く完了する必要があります。そのため、ある農園ではこの作業は20分以内に終了するとのことです。短時間の温度変化であっても、花は温度変化によって結露を生じやすくなります。花をできるだけ冷たく乾燥状態にするため、バンドリングが終わり輸出用の箱に詰める段階(パッキング作業)は、再び冷蔵庫内で行われます3 。箱へのパッキング作業が終わるとトラックに積み込まれるまで冷蔵倉庫に蔵置されます。

輸送準備時にも温度変化を引き起こさないよう工夫されています。トラックへの積込み時、リーファートラックの積込み口と冷蔵庫の出庫口は隙間なく連結され、外気に触れない状態を整えています。これにより、パッキング作業から国際空港でフォワーダーに引き渡すまで、温度変化のない輸送を実現しています。

輸送自体は、ケニアで輸出者が自らアレンジする場合と3PL事業者が冷蔵輸送を請け負う場合があります。大規模な農園は自らが輸出者であることも多く、自社でリーファートラックを所有することも多いのです。一方、中小規模の農園は、輸出者が契約する3PL事業者によるミルクラン式の集荷・輸送に頼ることもあります。農園から空港で引き渡すまでの温度管理の重要性が十分に認識されており、輸出時の国内輸送部分のコールドチェーンが徹底されているおかげで、ケニアの花き産業は成功を収めているのです。

図:花き農園から出荷までの流れ(ある農園の例)

図:花き農園から出荷までの流れ(ある農園の例)

(出所:花き農園へのヒアリングを基に筆者作成)

花き輸出はFOBでの出荷が多いため、輸出者は空港でフォワーダーに引き渡しますが、フォワーダーが使用する空港でも温度管理の体制が十分に整えられています。ケニア最大の国際空港であるナイロビ市内のジョモ・ケニヤッタ国際空港には、ケニア航空局が100,000トンのキャパシティがある冷蔵室を備え-18度~ 2度で管理されています。また、ケニア航空所有の貨物エリアには、輸出用スペース62,969 sq ft(5,850 ㎡)、冷蔵室も 7,459.46 sq ftを完備しています。この面積で100,000トン(60パレット)蔵置可能で、室温4度に保たれています4 。このように、国際空港が花き輸出を後押しするべくコールドチェーン対応の設備、オペレーションを提供しているのです。ジョモ・ケニヤッタ国際空港のコールドチェーン設備は隣国での評判も良く、タンザニアから輸出される生鮮果実も、ナイロビまでトラック輸送し、同空港から航空便に載せるケースが多いのです。また、エチオピア空港の保冷倉庫設備も昨年増強され、花き輸出はさらに促進されると考えられます。これらの空港では国内物流からのコールドチェーンを途切れさせず、シームレスな輸送、荷渡し、積み付けが行われています。

輸出に関しては設備が整えられていますが、ケニア国内市場向けの花き輸送には課題もあるようです。輸出の場合、農園から1度に出荷する量はたいてい1トン以上となるため、トラック1台を満載で稼働させることが可能です。一方で、国内市場向けは、ホテルやレストランなどへの納品であるため、1オーダー当たりの輸送重量は重くても数百キロであり、リーファートラックを1台フル活用するには少なすぎるのです。その結果、物流事業者の混載便を活用しますがその場合は通常トラックとなり、温度管理ができなくなります。そのため、顧客に到着するまでに生花にダメージがあり、廃棄となることも多いようです。ケニアでは常温品のトラック混載(LTL)は一般的ですが、保冷品のトラック混載輸配送はまだ一般的でないようです。このような事情もあり、コールドチェーンを必要とする中小規模(家族経営レベル)の小売業者も国内物流は自社物流で保冷車などを所有するケースが多いのです。大規模な小売業程3PLを活用するというのは、保冷混載が一般的でないことも影響しているかもしれません。

花きを例に見ましたが、ケニアをはじめ東アフリカは生鮮青果輸出が盛んで、航空貨物、海上貨物で世界各国に輸出されます。繊細な高価値貨物(マンゴー、アボカド、インゲンマメ、パプリカ等)の国内輸送にはシームレスなコールドチェーンが欠かせません。国際ゲートウェイまでの輸送はリーファートラックで輸送される必要があり、エチオピアのようにこれからコールドチェーン開発を強化すると銘打っている国もあります。コールドチェーン整備を中心にした物流網開発により、花きや生鮮青果輸出は目覚ましく促進されました。コスト削減を目的に海上貨物でもケニア花き輸出も始まっているように、コールドチェーンの発展と輸送モード開発がさらに進めば、私たちが東アフリカ産の花、生鮮青果を目にする機会がより増えることでしょう。

(この記事は2020年2月末のケニアの現地情報、2020年4月15の統計情報を基に書かれました)

  1. http://www.worldstopexports.com/flower-bouquet-exports-country/
  2. International Trade Center Statistics (HS code 060311の統計値)
  3. http://ucce.ucdavis.edu/files/datastore/234-1906.pdf
  4. https://www.kaa.go.ke/corporate/cargo/cargo-at-jkia/

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