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ロシア鉄道と一帯一路

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シニア・コンサルタント

那智 久代

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日通総研ニュースレター ろじたす 第29回ー③(2017年9月19日号)

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【Global Report】ロシア鉄道と一帯一路

極東ロシアにおける鉄道輸送

ロシアの国土面積は世界一、東西の距離は約10,000kmにも及びます。その東西をつなぐ鉄道は、物流において非常に重要な位置を占めています。ロシアにおけるモード別貨物輸送分担率(パイプラインを除く)を見ると、トンベースでは自動車に次いで42%ですが、トンキロベースでは実に91%を占めるに至っています(図1、2)。

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出所:Russia Federal State Statistics Service

鉄道で運ばれている貨物は、主に石炭、石油製品などの資源です(図3)。鉄道は、ロシアの主要輸出品である資源輸送で重要な役割を果たしています。また、石炭・コークスに関しては、ボストーチヌイ港、ワニノ港、ナホトカ港、ポシェット港など極東港湾が輸出全体の6割を担っている状況です。

図3:鉄道輸送品目別シェア 2016年(重量ベース)

図3:鉄道輸送品目別シェア 2016年(重量ベース)

出所:Russia Federal State Statistics Service

ボストーチヌイ港に石炭を輸送する鉄道

写真:ボストーチヌイ港に石炭を輸送する鉄道

国際輸送回廊:Primorye-1 & Primorye-2

ロシアからの資源輸出で重要な役割を果たしているロシア鉄道と極東港湾ですが、地理的に見ると中国東北部との距離が近いことがわかります。そのため、中国の「一帯一路」政策と関連し、Primorye-1およびPrimorye-2という国際輸送回廊の整備が進められています(ちなみに、“Primorye”とはロシア「沿海地方」を意味しています)。

出所:Google Mapより、日通総研作成

出所:Google Mapより、日通総研作成

中国東北部(遼寧省、吉林省、黒竜江省)は、遼寧省を除いて港湾がありません。資源や製品を輸出する場合、港湾までの国内輸送距離が長くなるため、輸送コストが高くなります。最も近いロシア極東港湾を輸出港として利用できれば、輸送コストの低減が図れる、というのが中国側にとってのメリットです。ロシア側も、シベリア鉄道とともに極東港湾の利用促進を目指しており、Primorye-1回廊では黒竜江省からウラジオストク港を経由して欧米の西海岸エリアへ、Primorye-2回廊では吉林省からザルビノ港を経由して日本や韓国へのトランジット貨物の輸送需要を見込んでいます。

中国側の思惑としてもう一つ興味深いのは、このルートを輸出ではなく中国国内輸送に利用しようとしている点です。中国東北部発の貨物を極東港湾経由で中国南部に輸送するルートを「一帯」と位置付けており、2017年5月の「一帯一路サミット」では、この回廊を含む中露の協力協定が締結されました。現状では、これらの回廊を利用した輸送はまだパイロット段階です。パイロット輸送で、どのような貨物を輸送しているのか見てみると、Primorye-1では黒竜江省の木材が上海や広東省黄埔に、Primorye-2では吉林省の重工業の中心地である長春発の貨物が韓国向けに輸送されています。ロシア極東開発省などによると、今後10年間で、Primorye-1では延べ50百万TEU、Primorye-2では延べ60百万TEUの貨物が輸送されると予測されています。中露の興味は「中国発ロシアトランジットで海外もしくは中国南部向け」ということなので、日本の事業者にはあまり関係ないかもしれませんが、逆向きのルートを考えれば、別の可能性が見えてくることも考えられます。果たして国際輸送回廊Primorye-1&Primorye-2が今後どの程度盛り上がるのか、引き続き注目していきたいと思います。

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