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Tim交流記 ~日欧の物流事情の違い~

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リサーチ&コンサルティングユニット1
ゼネラルマネージャー

小林 知行

日通総研ニュースレター ろじたす 第22回ー③(2017年2月20日号 )

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【Global Trend】Tim交流記 ~日欧の物流事情の違い~

この記事は2016年の年末に書いているのですが、今夏から4か月間当社にインターンとして入社し、「ろじたす」にも記事を寄せてくれたTimが、どうやらクリスマスに無事ドイツに帰国できたようです。今回は、彼との交流を通じ、日欧の物流事情の違いについて感じたことを書かせて頂こうと思います。

彼はいくつかの側面から、日欧の物流事情を比較したレポートを作成してくれたのですが、私が特に興味を持ったのは、荷主と物流事業者との関係性の違いに関する考察でした。

Timの目から見ると、日本の物流業は製造業、流通業の補助的産業として認知され、物流事業者は効率性を犠牲にしてでも顧客満足最大化を最優先に考えているが、欧州ではロジスティクスは重要産業で、情報流、物流のハブとなり、経済全体のイノベーションを起こすキーポジションであるという認識があるということです。また、荷主が物流事業者に求めるサービスレベルについても、日本では荷主側の物流部門担当がオペレーションの細目まで作り込むことを要求するのに対して、欧州では荷主は契約時の要求事項をKPIベースで充足しているか否かのみを管理しているとのこと。そのため、物流事業者が荷主と結ぶ契約期間についても、日本では概して長期間になるのに対し、欧州では短期間であることが多く、KPI未達の場合には容赦なく契約を解除することができるということです。

若干26歳のワカモンに日本の物流業の置かれた状況を的確に言い当てられ、34歳のオジサンは微笑みながら頷くのが精いっぱいだった訳ですが…。

改めて考えるまでもなく、宅配事業者の再配達や、納品先における軒先条件への細かな対応、顧客指定の帳票類の作成など、日本の物流事業者が顧客満足最大化のために行っている様々なサービスの中で、昨今の経営課題として認識されている事柄は数多くあります。Timの指摘にもあるとおり、日本の物流事業者の立ち位置が、荷主の従属的ポジションであることが要因のひとつであるという見方には説得力があります。

では、日本の物流事業者が欧州で認知されているような経済全体のイノベーターへと脱皮するためには、何が必要でしょうか。

ひとつ考えられることとしては、契約内容の精緻化です。現在SLA(Service Level Agreement)などの名称で徐々に普及してきておりますが、物流業務を受託する際に取り交わす契約書に、細かなサービス内容定義を記載し、記載外のサービスは原則提供しないこととするのです。しかし、そのような取り決めを行うことで荷主に敬遠され、業績に支障が出てしまうのでは元も子もありません。法律で規制する方法もありますが、過去物流に関する様々な革新的サービスが、その規制を乗り越える形で産まれてきたことを考えると、有効性には疑問が残ります。
やはり、迂遠なようではありますが、欧州における先進事例や理論の紹介による啓発が必要なのではないかと思わざるを得ません。製造業に目を転じてみると、トヨタ生産方式におけるTQC(Total Quality Control:全社的品質管理)やカンバンが、欧米に渡りTQM(Total Quality Management:総合的品質管理)、タイムベース競争、シックスシグマ等の形に敷えん化・逆輸入されることで、製造業という産業全体の革新と興隆に拍車が掛かったように思われます。物流業界でも同様の事象が起こるよう、わたくしも物流業界を中心とするコンサルタントとして微力ながら尽力できればと、思いを新たにした次第です。

Timとの交流会
世界のIoT化動向とロジスティクス

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