国際ビジネス感覚を養う
日通総研ニュースレター ろじたす 第20回ー③
【Logistics Report】国際ビジネス感覚を養う
中国をはじめ加工貿易輸出諸国は、今後の持続的な成長、発展に向けて、従来型の輸出・貿易モデルからの構造転換を図り、産業のバージョンアップを推進しつつあります。中国国内では、半導体産業の発展を推進するという国策が発表され、すでに多くの大型液晶パネル製造工場が建設され、半導体工場への投資が始動しています。
中国の液晶パネル製造工場と半導体工場の生産ライン建設においては、日本を含む海外からの輸入設備が多くを占めています。そしてそれは、大型国際物流プロジェクトのニーズへと繋がっているのです。国際物流プロジェクトは、遂行期間が長期間に亘り、かつ物量も極めて多いという特徴があります。しかもその中核となる装置に関しては、温度、湿度、振動管理に対する輸送条件が厳しいという繊細な要素までもが加わり、要求される国際物流技術は極めて高度なものとなっています。
こうした背景のもと、筆者は最近、液晶パネル製造工場の物流コンサルティング業務に携わることが多くなっています。それは、輸送企画から業者間の契約まで、日中間を跨る緻密な商談と高度な物流ニーズに対応できるトータルコンサルティングの役割が求められているからです。このコンサルティング業務に対応するなかで、日々、実に多くの悩ましい出来事に遭遇します。それは主として「日本企業」と「中国企業」の違い、また、「中国国有企業」と「中国民営企業」の違いによるものです。その文化・慣習の違いの壁に直面することは、ビジネスプロセスにおいて避けては通れないものとなっています。
図:中国の主要半導体製造基地 日経新聞掲載記事より日通総研作成
「日本企業」と「中国企業」の慣習でもっとも異なる点は「スピード感」でしょう。「中国企業」はまず、迅速に意思決定を行い、それをその後の実施過程において修正していくという特徴があります。これに対して、「日本企業」は、事前に細部まで確認を行ってから意思決定をするため、決定までに長く時間がかかり、いったん決めたことは安易に変更しないという特徴があります。こうした日中企業それぞれのビジネスにおける特徴が根強く存在しているため、コンサルタントには、物流の専門知識の前に、両国間の文化と慣習を融和させるコンサル力が問われることになります。
また、「中国企業」と一言でいっても、「国有企業」と「民営企業」とではまた違う慣習があります。そこでのもっとも大きな違いは「新しい物事を受け入れる姿勢」でしょう。「国有企業」のトップまたはその担当者は、基本的に官僚であることが多いため、「これまでと同じやり方で無事にやり遂げる」という「失敗しないビジネススタンス」を取りたがる傾向があります。一方「民営企業」は、より効率を上げたるために、新しい物事を積極的に受け入れる傾向にあります。
すでに古い記憶となってしまったかもしれませんが、8年前に発生した国際金融危機は、グローバル貿易の成長ペースを大きく鈍化させました。中国も経済成長率を落としていますが、対外投資および外資誘致を確実に広げ、今や中国資本は急速に世界に浸透しつつあります。来年発足するアメリカのトランプ新政権は、TPP(環太平洋経済連携協定)を挫折させる可能性が高いということもあって、グローバル貿易の構造が大きく変わるかもしれません。中国企業および中国市場を含むグローバルな視点で、日本企業はこれまでにない「国際ビジネス感覚」を養う必要に迫られているように感じます。
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