海外引越マーケットに押し寄せるグローバル化の波①
日通総研ニュースレター ろじたす 第16回ー③
【Global Report】海外引越マーケットに押し寄せるグローバル化の波①
日系海外引越マーケットでは日本人対応や、いわゆる日本的サービスへのニーズが根強く存在するため、外資系海外引越マーケットとは垣根で隔てられている感があります。しかし、昨今の国境を越えた企業間M&A、グローバル人事システムの浸透などにより、今後、日系も含めたマーケットのグローバル化が進展していくと考えられます。筆者は2014年9月まで日本通運で海外引越事業に携わっており、その時の体験と見聞を踏まえて海外引越マーケットのグローバル化について状況をご紹介いたします。なお、本稿では「海外引越」と「引越」両方の単語を使っていますが、いずれも「海外引越」を意味するものとご理解ください。
物流業界とは異なる海外引越のプレイヤー
FIDI(Fédération Internationale des Déménageurs Internationaux)という団体をご存知でしょうか?ベルギーに本部を置く団体で、海外引越業者の中でも品質管理体制や財務
状況など厳格な審査に合格した会社だけが加盟を認められます。
加盟会社間で仕事をして万一債権回収が不能になった場合に、FIDIが補償する制度があります。年に一度総会が開催され、筆者は2012年4月に米国Bostonで行われた総会に出席しました。期間中は全世界各国から優に3桁を数える引越会社が参加し、懇親を深めながら商談を進めます。総会には大手も参加していますが、大半は自前の海外ネットワークを持たない中小引越会社で、相手国における集荷や配達作業は信頼できる同業者に依頼するしかありません。こういった引越会社の業者間ネットワーク構築の場としてFIDIが機能しているのです。
FIDI総会で印象的だったのは、物流業者の姿が見えなかったことであり、総会に参加しているのは物流業界では馴染みのない会社ばかりでした。外資系引越会社で代表的な大手の名前を挙げると、Asian Tigers Mobility, Crown Relocations, Santa Fe Relocation Services, AGS, Allied Pickfordsなどですが、果たして物流業界でその名前を耳にすることがどの程度あるでしょうか?いずれも日系海外引越最大手の日本通運に匹敵するか、それ以上の規模を誇っています。海外引越における日通とヤマトは世界的に見て稀有な存在と言えそうです。
出所:FIDIホームページより
https://www.fidi.org/
出所:FIDIホームページより
外資系引越会社の品質を侮るべからず
筆者が参加したFIDI総会では、地元Bostonの引越会社Isaac’s Movingの見学ツアーが組まれていました。同社はモデルルームを研修センターにして従業員教育を実施し、顧客アンケートで評点が低い従業員には個別指導を行うなど、品質向上に努めています。日系でも同様のことを行っている会社はありますが、Isaac’s Movingは研修に同業他社の従業員も受け入れています。外資系引越会社が海外で集荷した引越荷物の日本側配達作業を扱った実績の一例ですが、西アフリカから日本に異動してきた南米の外交官の引越荷物を扱った際、「高価な食器がたくさんありましたが、開梱すると1点の破損もなく、見事でした」と立ち会ったスタッフが話してくれました。外資系引越会社の品質は侮れません。
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