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オムニチャネル:消費者を中心としたチャネルの誕生

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シニア・コンサルタント

片山 徳宏

日通総研ニュースレター ろじたす 第10回ー③(2016年2月22日号)

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【Logistics Trend】オムニチャネル:消費者を中心としたチャネルの誕生

現代は、消費者を中心としたチャネルの網の目が広がっている時代といえるでしょう。卸売業者や小売業者を中心に構築されていたチャネル(=商品の販売・流通経路)は、チェーンストア化、大規模小売店舗拡大の流れの中で、集中化・単純化の道をたどると言われてきました。

しかし、今や販売者と消費者との接点は、店舗からスマートフォンやタブレット端末上に移り、チャネルのあり方は再び多様化・複雑化に向かいつつあります。消費者は自らの志向やその時々の条件に従い、複数のチャネルのうち最も適切なチャネルを通じて商品を購入するようになったのです。

チャネル選択権が消費者の側へと移った結果、販売者は元々保有するチャネルだけでは、消費者との繋がりを維持することが難しくなりました。消費者は、複数チャネルの中から最も便利なチャネルを選んで商品を購入するようになったからです。「オムニチャネル」はこうした複数チャネルの並立状態をシームレスに繋ぐためのサービスモデルです。多様な購買行動に応じた複数のチャネルを用意し、その違いを消費者が意識することなく、あたかも一つのチャネルであるかのようにシームレスに渡り歩けるようにする。これがオムニチャネルの目指すサービスの方向性です(図)。

図:オムニチャネルの概念図 出所:引用元:NRF Mobile Retail INITIATIVE 『Mobile Retailing Blueprint V2.0.0』

図:オムニチャネルの概念図
出所:引用元:NRF Mobile Retail INITIATIVE
『Mobile Retailing Blueprint V2.0.0』

これに伴い、物流もまたチャネル間をシームレスに渡り歩くことが求められています。並立するチャネル毎に別箇の商品流通網を構築することは非効率だからです。しかし、これを実現するためには、様々な困難を伴うことも容易に予想できます。

例えば、ある実店舗を持つ商店がネット販売と宅配のサービスを始めたとします。もっともシンプルな形は、実店舗でネットの注文を受け、店頭にある商品をそのまま出荷するというものでしょう。店頭にある商品がそのままネットでも購入でき、宅配されるのであれば、これも一つのオムニチャネルのモデルであると言えます。

実際にこのサービスを運営するとなると、どうなるでしょうか。
店頭にはただ商品が陳列されているだけではなく、商品の状態、産地や品質を開示する情報で溢れています。こうした情報はネット上でも開示できるでしょうか。店頭の棚にある商品の品揃えやレイアウトは、様々な要因で随時変化していきます。こうした変化をネット上の情報に素早く反映できるでしょうか。ネット上で受注した瞬間に店頭から商品が無くなってしまう可能性もあります。店頭の商品がネット販売の為に出荷されるということは、誰かが店頭の商品を棚から取るということであり、効率的な出荷作業は期待できません。宅配時間や商品管理の方法、宅配中のリスクについても考えなければなりません。注文変更やキャンセル、代金収受や、返品への対応も必要です。

以上のような諸々の制約条件が重なった結果、店頭と同水準のシームレスな販売サービスを提供することは困難になり、本来オムニチャネルが目指すべき方向性・姿とはかけ離れたものになってしまいます。

このように、オムニチャネルは販売行為と物理的な商品の流れ(物流・サプライチェーン)との間の隔たりや非効率を強く意識させることになります。「物流がチャネル間をシームレスに渡り歩ける」ようにするためには、現在の物流の仕組みだけでは足りないということがお分かりいただけるかと思います。

次回は、物流・サプライチェーンの領域から見たオムニチャネルの構成要素を整理しつつ、とくに物流に求められる取り組みについて述べさせていただきます。


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