近年、注目される中国-欧州鉄道輸送の国境施設
日通総研ニュースレター ろじたす 第26回ー④(2017年6月19日号)
【Global Report】近年、注目される中国-欧州鉄道輸送の国境施設
近年、習近平中国国家主席が提唱する一帯一路経済構想の一環として、中国内陸部と欧州を15日間前後で結ぶ貨物専用列車(ブロックトレイン)が定期運行され、新たな物流ルートとして注目を集めています。
欧州方面に抜ける中国の内陸国境は満州里(ロシア国境)、二連浩特(モンゴル国境)、阿拉山口(カザフスタン国境、カザフスタン側の駅はDostyk)が有名です。また、道路国境として霍尔果斯(Khorgos、カザフスタン国境)が日本では知られています。最近では霍尔果斯でも鉄道施設が整備され、多くの中央アジア諸国向けブロックトレイン(中央班列)が霍尔果斯国境を利用しているようです。
中国とカザフスタンでは鉄道の軌道幅が異なるため、機関車や貨車を交換する必要があります。当然、貨物も積替えが必要です。鉄道による越境輸送の場合、貨物の受け入れ国で通関などの輸入諸手続き・検査・作業などが実施されます。例えば、中国から欧州へ向かう輸送の場合、それらの手続きや検査はカザフスタン側で実施しています。
この物流ルートにおいて気になる点のひとつとして、諸手続き・検査・作業などのための国境施設の状況が挙げられます。安全に短時間で輸送品質を損なうことなく処理できる状況なのか。結論を先に申し上げると、私が視察したカザフスタンのDostykとKhorgosの両国境の鉄道施設は、ブロックトレインに限れば、問題ない水準で運用されていました。
一般的に貨物列車の場合、日本と違って時刻表はないのですが、発着予定が中国の各出発駅からカザフスタン側の通過国境施設に示され、その情報をもとに日々の受入れ作業工程表を作成しているため、ほぼ安定した運用を実現できているそうです。
つまり、ブロックトレインに関しては中国の発駅からカザフスタンのDostyk、あるいはKhorgosにASN(Advanced Shipping Notice;事前出荷明細情報)が送られる仕組みが実現されているわけです。このASNの仕組みが、国境での積替え作業を容易、かつ、安定した品質にしていると考えられます。
また、Khorgos国境の開発には、世界最大の港湾オペレーターの1つであるドバイの“DP WORLD” が開発マネジメントに参画しています。そのため、オペレーションはハード、ソフトともにグローバル港湾並みの品質で実施されていました。KhorgosはDostyk(中国側は阿拉山口)に比べて新しいうえ、自然環境も比較的穏やかであるため、写真の様なガントリークレーンでコンテナの積替えを実施していました。コンテナの処理能力も高く、SEZ(Special Economic Zone:経済特区)も開発されていることから、今後鉄道の主要な国境となる可能性があります。
ただし、現状、中国沿岸部発で定期運行されている欧州向けブロックトレインはありません。我が国発の貨物を考えた場合、同物流ルートの利用には依然として手続きや積替えなどによる時間、費用、破損などの物流品質の低下が懸念されます。筆者も講演者として参加した、本年4月に開催されたカザフスタン鉄道主催のセミナーでは、連雲港から欧州向けブロックトレイン構想が取り上げられていました。これは、博多港にブロックトレインを編成するのに十分な貨物を集め、連雲港まで輸送し、ブロックトレインに繋げるというSEA & RAILの意欲的な構想となっており、今後の展開が注目されます。
写真:カザフスタン側Khorgos国境に立地する
<Khorgos-Eastern Gate>SEZ内の鉄道DRY PORT
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