欧州最先端の港湾と活況を誇る内陸港湾を視察
日通総研ニュースレター ろじたす 第12回ー③(2016年4月18日号)
【Global Report】欧州最先端の港湾と活況を誇る内陸港湾を視察
(連載第10回)新興国の物流最前線
前回のロッテルダム港に引き続き、今回は欧州最先端の港湾技術を誇るハンブルグ港と、近年日系企業が進出、活況を呈している内陸のデュイスブルグ港についてご報告します。
図:該当エリアの地図
ハンブルグ港は、北海からエルベ川を約100km遡った地点にある河川港でドイツ最大のコンテナ港湾です。年間コンテナ取扱量は973万TEU(2014年)で、世界15位。
欧州ではロッテルダム港に次ぐ第2の港湾となります。輸出入の主要相手国は中国がダントツで第1位。第2位は、2012年8月にWTOに正式加入したことを受けて、ロシアとなっています。
ハンブルグ港にはコンテナ専用ターミナル(CT)が4カ所あり、中でもCTA(Container Terminal Altenwerder)は、「世界で最も進んだCT」といわれています。自動搬送機(AGV:Automatic Guided Vehicle)、自動スタッキングクレーン(ASC:Automatic Stacking Crane)に加え、ガントリークレーンも半自動化(中央指令室よりコントロール)されており、クレーン1台のコンテナ取扱能力は35~45個/時に達し、48時間で約4,500個ものコンテナを取り扱うことができます。2002年に自動化CTを供用開始し、技術的にはロッテルダム港(新設された「マースフラクテII」を除く)よりも進んだ港となっています(ちなみに、昨年は景気減速の煽りを受け、貨物量が対中国で50%、対ロシアで36%減少した模様)。
次に、デュイスブルグ港についてですが、同港のあるノルトライン・ヴェストファーレン州はドイツ北西部の内陸に位置し、ライン川を中心に産業が発展、日系企業の欧州拠点となっています。デュイスブルグ港は9カ所のCTを備えた河川港で、コンテナ取扱貨物量は年間300万TEU以上となっています。
今回の視察では、その9つのCTのひとつ、DIT(Duisburg Intermodal Terminal)を訪問・視察しました。バージからの積卸しはバージ用クレーン(写真1)、トラックへの積卸しはトップリフター、ヤード内のコンテナ搬送はリーチスタッカーで行われています。
オンドックの鉄道ヤードには4本の引き込み線(写真2)があり、2台の鉄道用クレーンが装備されています。
写真 1:バージ専用クレーン
写真 2:ターミナル内の引き込み線(約700m)
このDITでは工業都市・デュイスブルグと中国内陸部の大都市・重慶を結ぶ、ブロックトレインによる鉄道輸送が行われています。
この鉄道は「渝新欧鉄道(Yuxinou Railway)」と呼ばれ、2011年に開通。欧州-アジア間の輸送を大きく変える「現代のシルクロード」と期待されています。重慶から、カザフスタン、ロシア、ベラルーシ、ポーランド、デュイスブルグと6ヵ国を経由しており、全長は約11,000㎞に達しています。
デュイスブルグ-アジア間のルートとしては、大きくは①「渝新欧鉄道」を主とした南側ルート(チャイナ・ランドブリッジ)と、②中国(満州里)-ロシア(ザバイカリスク)の国境からシベリア鉄道でロシアを経由する北側ルート(シベリア・ランドブリッジ)の2つがありますが、欧州側の企業ではサービスが安定している南側ルートを選択・利用する傾向が強いようです。デュイスブルグ港に到着した貨物は、トラックやバージ、鉄道で、ハンブルグ、ロッテルダム等、他の欧州各都市に輸送されます。
鉄道輸送の利点は輸送日数の短縮です。海上輸送では重慶-デュイスブルグ間の輸送に45日程度を要しますが、「渝新欧鉄道」では14~16日と大幅な短縮(3分の1)が可能になります。現状では船による輸送が圧倒的に多いようですが、今後の動向を注視する必要があります。
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