【物流コスト】共同配送でコスト削減を狙うなら特殊要件共配だ!
共同配送は個別の配送から幹線輸送まで含めると大きく3つに分かれます。「特殊要件共配」、「幹線共同輸送」、「特定エリア共配」です。ただし、共同配送で大きなコスト削減を狙うのであれば、時間指定、検品立ち合いなどの特殊要件を含む配送を「特殊要件共配」として実現することです。実現へ向けた4つのステップと最大のポイントである「共配スキームに参画する全ての会社が効果を享受できること」について説明します。
特殊要件共配とは何か?
特殊要件共配とは、専用便(貸切便・チャーター便)による配送で、時間指定・納品待機・検品立ち会い・納品先での仕分作業などの制約や付帯作業が必要となる配送を指しています。量販などの物流センターへ納品するようなケースは概ねこれに該当します。物量がまとまらない場合でも、これらの特殊な要件をこなすために、各社が個別にトラックをチャーターして納品を行います。特殊要件共配が実現できれば、自社でチャーターしないと出来ないような特殊な要件を、2社または3社で費用を負担しながら実現することができるため、結果として共同配送の大きな効果を享受できます。
共配の基本検討ステップ
大前提として、共同配送を実施する相手が必要です。相手をどのように見つけるかという部分については、いくつかの考えがあります。最も一般的なものは、業界ごとに組織されている工業会、研究会、勉強会などに属するメンバーに声を掛けることです。共同配送の成功例として有名なキヤノンとエプソンの例も、もともとは家庭用インクジェットプリンターの使用済みカートリッジを共同で回収する「里帰りプロジェクト」で両社の交流を深めたと聞いています。
もうひとつの方法としては、配送事業者(物流事業者)へ仲介を依頼する方法です。現在、委託している配送事業者に共同配送が可能な荷主のマッチング提案を依頼するという方法です。配送先の一致率や商品カテゴリーなどから相性のよさそうな相手を決める必要があります。(まさに結婚相談所のような感じです)今回の説明は、共同配送を実施する相手が決まったところからの検討として考えて下さい。基本ステップとしては、図表1のような5つのステップで検討を進めます。
基本検討ステップとして、①積載率の把握、②共配先候補の抽出、③納品条件の整理、④期待効果の算出の4つがあります。
①積載率の把握
配送の積載効率を把握するための指標のひとつとして、積載率があります。積載率を算出するためには積載基準が必要となります。実運用として積載可能な容積(m3)または重量(kg)を10トン車、4トン車、2トン車などの車種別に積載基準として決めておきます。実際に積載した容積が積載基準に対して何%であったかを把握します。その車両に積載余力があるのか否かを確認することができます。
特殊要件を伴う配送が対象となるため、多くのケースで貸切便が対象になります。貸切便の配送先は時間指定がある配送先(物流センターへの納品や大口代理店への納品など)を中心に固定化されていると思います。このような貸切便の配送先別に積載率を出しておくことで共同配送を優先すべき配送先が定量的に把握できます。
②共配先候補の抽出
共配先候補の抽出は、その共配を実施することで得られる効果(コスト削減)と実現のしやすさを基準に抽出します。最も効果が出るのは、各社が貸切便となっており、配送先が1カ所かつ遠距離の場合です。単位あたり運賃も高くなる傾向があり大きな効果が期待できることから、実施の優先度も高くなります。
一方で、それが共配として実現するのか否かという条件面での抽出も必要となります。せっかく遠距離で各社が貸切便であっても、高い積載率では意味がありません。さらに低積載であっても、事前に店舗別やフロア別にパレットを分けて納品するような条件がある場合(仕分け条件で低積載にならざるを得ない場合)も共配の実現は難しくなります。
実現面での抽出条件として、低積載かつ仕分け条件がないものが、最も高い優先度の配送先といえます。これらの条件を図表1にまとめています。A社とB社の共配先候補の抽出として、図表2のように整理すると考えやすくなります。
図表1:共配の効果面と実現面における優先度
図表2:配送先の抽出例
③納品条件の整理
特殊納品要件の場合は、貸切便でないと行えない細かな要件があります。単独で行っていた時の配送と変わらない品質で納品するためには、これらの要件をきちんと整理して抑えておく必要があります。確認するポイントとしては、図表3の通りです。さらにこれらを納品先に落とし込んだものが図表4となります。
図表3:納品要件の確認ポイント
図表4:納品先別の整理
④期待効果の算出
特殊要件共配では、各社は積載量に関わらず1車両いくらという運賃が生じています。これを例えば2社で共配するといくらになるのか?ということが期待効果に直結します。ここで注意していただきたいことは、共配は荷主だけで成り立っているわけではないということです。つまり、共配スキームに参画する物流事業者も当然ながら共配による効果を享受する必要があります。
それでは荷主と物流事業者それぞれがどのように効果を享受するのかを考えてみたいと思います。図表5は物流事業者が共同配送を実現する際に、追加作業として必要になることです。見ていただくと、共配の可否を判定するためのシステム(またはツール)や共配の実施報告、料金計算などそれに伴う事務処理が生じます。
荷役作業面では、共配が行えるようにパレットを積み替えてまとめる、2カ所の荷主の物流センター間を移動して2カ所で積込みを行うなどが必要となります。物流事業者側には共配による相応の負担が生じるわけです。荷主は共配によるこれらの作業コストを考慮した上で共配運賃を受け入れることが必要となります。
図表5:共配により物流事業者で生じる作業
ここで共配運賃の決め方で最も重要なポイントをお伝え致します。それは、「共配スキームに参画する全ての会社が効果を享受できること」です。A社がコスト高になりB社がコスト減になるような共配はスタートできませんし、仮にスタートできたとしても長続きしません。A社もB社も物流事業者も全ての企業が何らかのメリットを享受することが共配を成功するための最も重要なポイントとなります。
では、どのようにして実現するかということになります。それは、荷主側では「現行の運賃よりも安くなること!」、物流事業者側では「現行の収受料金より高くなること!」につきます。具体的に説明致します。例えば、10トン車の貸切運賃をA社が30,000円、B社が40,000円で行っていたとします。この料金は通常はA社とB社間ではオープンにしません。(オープンにしない代わりに物流事業者が料金調整を仲介)物流事業者は10トン車2台分の収入が1台分に減少してしまいますが、先ほどの共配による作業量の増加に見合う料金加算して設定します。
仮に、これまでの料金の1.4倍もらえるということであれば、A社とB社の運賃から70%分ずつ(A社:21,000円、B社:28,000円)もらえるため、1台あたりの収入は49,000円となります。利益率は向上します。荷主側もそれぞれ、これまでの料金の70%に抑えることになるため、30%のコスト削減となります。
これを例えば過去3カ月分の配送先別の物量をシミュレーションして、共配の実施率(共配が実施出来ない日はこれまでと同一金額)とそれによる削減金額から月間の削減額と削減率を得ることができます。
透明性を持ち、一律の共配料金を設定して失敗するケースがあります。これは物量の多い荷主に物量の少ない荷主がタダ乗り(フリーライド)する構図となり、物量のある荷主が不公平感をいだくためです。一律は一見すると平等そうでありますが、荷主間の物量差や料金差がある共同配送においては不公平なものとなってしまいます。
まとめ
このように特殊要件を伴う配送は、物量とは関係なく貸切便となっていることから単位あたり運賃も割高になっていることが多いのが実情です。共同配送で大きなコスト削減を狙うのであれば、まずターゲットは「特殊要件共配」です。これをどのように実現していくのかは4つの実施ステップでご理解いただけたのではないでしょうか。「共配スキームに参画する全ての会社が効果を享受できること」を意識しながら共配を推進してみてください。
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