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どうなる日本の物流?~第4回 日本の物流は梗塞状態から抜け出せるのか?

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リサーチフェロー

田阪 幹雄

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日本でも、バーコードを中心とする流通コードやEDIメッセージの標準化を推進するGS1という国際機関をご存じの方は多いでしょう。米国と欧州でそれぞれ標準化を推進していたUCC (Uniform Code Council) とEAN (European Article Numbering Association) が1990年に統合したグローバルな機関です。しかし、そのGS1の米国側組織であるGS1 USが2012年に統合したVICS (Voluntary Interindustry Commerce Solutions Association) という組織をご存じの方は少ないでしょう。当然、この統合も日本ではほとんど注目されなかったのですが、ひょっとするとこの統合が近未来のメインストリームを生み出すかも知れないのです。どういうことでしょうか?

“きめ細かさ”を志向する日本の物流

荷主の工場や物流センター、3PL事業者の倉庫や物流センターから貨物を出荷する際に運送事業者への指示書として使用されている送り状は、日本では製造・卸売・小売といった異なる産業の間や、衣料品・食料品・家電・日用雑貨といった異なる業種の間ではもちろん、同じ産業や業種の間でも、時としてひとつの企業内でも工場や物流センターが異なれば帳票もデータ・フォーマットも異なっています。産業により、業種により、企業により、そして、同じ企業内でも工場や物流センターによりオペレーションのやり方が異なるのは当然であり、Customizationを通じてそれにきめ細かく対応するのが物流の役割であると考えられてきたのではないでしょうか。

標準化を志向する米国の物流

しかし、VICSという組織は、Interindustryというその名の通り、産業の枠を超え、また業種の枠を超え、更に荷主と物流事業者という枠を超え、物流に関わる各種帳票やデータの標準化を民間企業が自主的、即ちVoluntaryに推進して来た組織なのです。

以下にフォーマットの抜粋を示した日本の送り状に相当するVICSの標準Bill of Ladingについて見てみましょう:

Bill of Lading

この帳票上のデータ項目の行数、文字数、数字・文字列の区分等について、産業や業種の枠を超えて標準化を進めて行こうというのがVICSの目指していることなのです。

更に、赤い楕円で囲まれた部分にご注目下さい。(A) SCAC (Standard Carrier Alpha Code) は、全米トラック運送協会 (National Motor Freight Traffic Association) が管理する運送人コード、(B) NMFC# (National Motor Freight Classification No.) は、同協会が管理する貨物品目コード、(C) CLASSは、(B) の貨物品目コードにリンクする運賃クラスのコードです。これら一連のコードと荷送人(Ship from)と荷受人(Ship to)のZIPコード(日本の郵便番号に相当)、重量等のデータが路線トラック事業者に電送されれば、運賃の自動計算も可能になるのです。

このようなデータの標準化が図られれば、サラサラの血液が血管を流れて行くように、荷送人・運送人・荷受人間のデータ交換をシームレスにつなぐことが可能になります。

欧米と共に標準化に向かう世界の物流

VICSを統合したGS1 USは米国の組織ではありますが、1990年のUCCとEANの統合以来GS1 in Europeと共に流通コードやEDIメッセージのグローバルなデファクト・スタンダードの構築を推進してきたことを考えると、物流に関する帳票やデータ・フォーマットの標準化は、今後欧州でも進んで行くことになり、産業の枠も業種の枠も、そして荷主と物流事業者という枠をも超えたグローバルな標準化が図られて行くことになるでしょう。

日本の物流はどこに向かうのか?

それに対して、このような標準化が図られてこなかった日本の場合、荷送人・運送人・荷受人の間でのデータの手入力が常態化しており、EDI化されている場合であっても、統一化されていないデータ間で何らかの読み変え、変換等が必要となっており、物流のデータの流れは言わば梗塞状態に陥っているように思われます。

現在IoTを中心とするインダストリー4.0、ロジスティクス4.0が展開中ですが、センシング技術、マテハン機器やソフトウェア、ネットワーク、データの全体を統合し、標準化したプラットフォームを確立した者がリーダーとなるでしょう。そのような状況下で、Customization中心で生きてきた日本の物流はどこに向かって進むべきなのか、慎重に、しかし急ぎ足で決めて行く必要があるでしょう。

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