農業改革で物流業界に影響はあるの?② ~コメ政策の変化と物流~
日通総研ニュースレター ろじたす 第4回ー①(2015年8月17日号 )
【Logistics Report】農業改革で物流業界に影響はあるの? 連載②/連載②
前号に引続き農業改革が物流に与える影響について書かせて頂きます。
今号のトピックは「新規需要米」です。
図 1:お米の生産量と需要量推移
出所:農林水産省「食料・農業・農村白書」
(平成19年度)より日通総研作成
まず、我が国のお米の需給について見てみましょう。図 1のグラフをご覧になると判る通り、需要量は漸減しており、それに寄り添うような形で供給量も漸減しています。
ところどころかなり激しく供給量が変動しているのは、農業が自然相手で豊作凶作の波があるためですが、お米の需要量にほぼ同期して供給量も漸減しているのは、行政が様々な抑制策を講じているためです。
直近では2013年12月に政府が発表した「農林水産業・地域の活力創造プラン(通称:4つの改革)」でその内容が明らかにされています(図 2参照)。
図 2:農林水産業・地域の活力創造プラン(通称:4つの改革)概要
出所:農林水産省「新たな農業・農村政策が始まります!!」
(平成25年12月)より日通総研作成
「4つの改革」では、主食用米以外の用途である「新規需要米」の生産を奨励するために、転作を動機付ける交付金を定めています。その中で特に注目を集めているのが家畜の餌となる「飼料用米」です。需要者が出した2015年産の年間需要量見通しでは合計約105万トンとなっています。これは昨年のおよそ6倍という急激な伸びですが、実態はどうなのでしょうか。
農水省の2015年5月15日時点の発表では、生産量の予測は35万トンに留まっており、需要者側の見通しまでには至っていません。これは飼料用米が抱える様々な課題に起因しており、生産者側から多く聞かれるのは「保管場所の確保」や「流通経費低減」に関する声です。
保管場所の確保に関して農水省の公表資料では「主食用米の減少で空いた既存施設の有効活用等を進めていくことが重要であり、これらの取組を支援するために必要な予算を確保」とあり、保管場所確保のために新たに営業倉庫を賃借するなどの動きは、少なくとも今年度は殆どないと推測されます。
また、流通経費低減に関しては、「飼料用米の販売価格は主食用米よりも相当低い水準にあるが、輸送経費が販売代金を上回る実態にはない。」と記載があるのみで、現時点では生産者と需要者の自助努力で流通経費を低減していく必要があります。
農協系統では、全農が生産者から直接買取り、保管・配送を行うスキームを確立することが公表されております。それ以外の需要者への輸送については、上記の通り飼料用米と主食用米の価格差から、低価格での輸送料金の提示が必要となるでしょう。
飼料用米の近年の価格水準は30,000円/トンです。帰り荷、積み合わせ等の工夫で生産者も需要者も収益を確保できる輸送料金の提示ができれば、物流事業者にとっては新たな商機になるのではないかと思います。
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