日本と海外の「多重連結トラック」走行事情の違い
日通総研ニュースレター ろじたす 第24回ー②(2017年4月17日号 )
【News Pickup】日本と海外の「多重連結トラック」走行事情の違い
ドライバー不足問題の緩和策として期待がかかる「ダブル連結トラック」
トラック運転者の人手不足問題が叫ばれて久しくなりますが、これまでのようにモノが運べなくなる事態がいよいよ現実になりつつあります。国土交通省は、2016年を生産性革命元年として「労働者の減少を上回る生産性の向上」を目的に様々なプロジェクトを推進していますが、物流分野では、荷主企業との協調によるトラック業務改革や、全体の2割を占めるともいわれる再配達を防ぐ宅配便システムの構築、自動隊列走行の実現、「ダブル連結トラック」による省人化などの取り組みを掲げています。そのなかでも今回は「ダブル連結トラック」についてご紹介します。
「ダブル連結トラック」とは、フルトレーラーやダブルストレーラーなど、2台のトレーラーが連結された車両のことです(図1、2)。現在、日本における特殊車両の車両長は 21m以下と定められており、それを上回る車両の公道走行は認められていません。今回、国土交通省は生産性向上プロジェクトの一環として、車両長上限を最大25mまで緩和する方針を打ち出しています。これにより、長大トラック1台で10トン車2台分の輸送が可能となり、省人化や輸送効率の向上、環境負荷低減などの効果が期待されています。
図1:フルトレーラー連結車(日本)
図2:ダブルストレーラー連結車(日本)
出典:国土交通省
昨年11月に埼玉県~愛知県、群馬県~三重県、今年の3月に神奈川県~愛知県、静岡県~愛知県の区間にて、車両長21mのダブル連結トラック(フルトレ)の走行実験が行われました。
◆オーストラリアの「ロードトレイン」
日本の車両長制限値(21m)は、諸外国に比べてどうなのでしょうか。
例えば、国土が広く資源が豊富なオーストラリアでは、大量輸送のニーズが大きいため、「ロードトレイン」と呼ばれるトラクターヘッドに2台から4台のトレーラーを連結した車両の公道走行が許可されており、4台連結の場合の緩和値はなんと、車両総重量130トン、車両長は53.5mです!日本ではこのような超長大トラックの公道走行は認められておらず、宇部興産㈱の私道(同社専用道路)内を走行している、総重量約120トン、車両長約30mのダブルストレーラーが国内最大となっています。(先日拝見する機会がありましたが、その圧倒される大きさ・威圧感に大変感激いたしました!)
海外ではオーストラリアだけでなく、アメリカやカナダでも3台までの連結車両の公道走行が許可されています。
オーストラリアの「ロードトレイン」は、車両構成により種類が分かれています。トレーラーの連結方法には①「ドーリーによる連結」と、②「第五輪による連結」の2種類があり、前者は“A-double”(図3)、後者は“B-double”(図4)と呼ばれています。トレーラーが3台以上連結されている場合も、その連結方法によりA・Bを冠した名称となっています。例えば、3台のトレーラーをそれぞれ第五輪で連結した車両は“B Triple”と呼ばれています(写真参照)。同国最大のロードトレインは、2組の“B–double”をドーリーで連結した“BAB Quad”と呼ばれる4台連結車両となっており(図5)、前述のとおり、車両長53.5m、総重量130トンまでの連結車両の走行が可能となっています。
図3:オーストラリアの2台連結ロードトレイン
(A-double)
図4:オーストラリアの2台連結ロードトレイン
(B-double)
図5:オーストラリアの4台連結ロードトレイン(BAB Quad)
出典:国土交通省資料より日通総研作成
写真:オーストラリアの3台連結ロードトレイン(B Triple)
出典:Christopher Ludwig, Automotive Logistics
◆幹線輸送の効率化への動き
日本では、EC(電子商取引)の発展によりラストワンマイルの配送がますます多頻度小口化していますが、一方で、幹線輸送については可能な限りまとめて、輸送効率を向上させようとする動きがあります。安全性や運転者の技能、駐車や乗換スペースの確保、貨物の集約、重量制限、採算性の問題など、考慮・解決すべき課題もまだありますが、今後も幹線輸送における車両の大型化は推進されていくと思われます。
昨年度は中継輸送およびダブル連結トラックの実証実験が開始され、来年年明けには自動隊列走行の実験が予定されています。取引条件の改善や長時間労働の抑制に向けた取り組みなども含め、トラック運送業はかつてないほど注目を集めています。物流は国民生活に欠かせない「産業の血液」です。ドライバー不足の問題を契機として、実態の改善とともにその公共性や重要性が世間に正しく認識され、業界全体の地位向上に繋がっていけばよいと思います。
http://www.jta.or.jp/rodotaisaku/kyogikai/pdf/Shipper%20recommendation%20system%20Leaflet.pdf
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