【ロジスティクスレポート No.01】 9割の荷主企業が物流を「重要な経営課題」と~NX総研アンケート調査にみる荷主企業の動向~
- NX総研が実施したアンケート調査結果によると、荷主企業の約9割が物流を重要な経営課題と回答している。これは、物流が企業競争力を左右する鍵との認識が強まっているあらわれであろう。
- 物流業務のアウトソーシングは計画・管理業務を含む広範な分野で進んでおり、荷主企業のアウトソーシングに対する取り組み姿勢が強まっている。
- 「特定の事業者に一括して委託した方が効率的」なことから、利用する物流事業者を絞り込む動きが一部の荷主企業において認められる。このような集約化の動きは、荷主企業の物流に対する認識の広がりとともに拡大していく可能性がある。
- 物流事業者を選択する際は、「運賃・料金」と「品質」(ともに83%)、さらに「緊急時対応」(58%)を重視する荷主企業が多い。物流事業者には、いっそうの品質向上と徹底したコスト削減に加え、リスク管理体制の整備が強く要請されよう。
1.物流は「重要な経営課題」
2005年6月にNX総研が実施したアンケート調査によると(1)、物流を「最も重要な経営課題」と位置づけている荷主企業が11%、「重要な経営課題の1つ」と位置づけている荷主企業が78%あり、実に約9割の荷主企業が物流を重要な経営課題と回答している。
これは、荷主企業においては小口・多頻度での時間指定納品などが増加する一方で、物流コストの削減が必須のテーマになっているなか、物流を的確に行うことが競争力を左右する鍵を握っているとの認識が強まっているあらわれであろう。
(1) 2005年6月下旬に荷主企業2,500社を対象にアンケート調査を実施し、1,182社から回答を得た(回答率47.3%)。
図-1 荷主企業における物流の位置づけ
2.拡大する物流業務のアウトソーシング
物流が重要な経営課題になっているなかで、物流を専門の事業者にアウトソーシングし、より高度で効率的な物流を実現したいとする意向も強まっている。物流の実業務はいうまでもなく、物流の管理業務のうち物流品質管理や在庫管理などは5割以上の荷主企業が、また、物流の計画業務に関しては物流システムの構築を8割近くの荷主企業がすでにアウトソーシングしている状況にある。
今後3年位先までの意向をみると、物流コスト管理や情報システムの構築についてアウトソーシングを進めようとする荷主企業が多くなっている。
物流の実業務はもちろん、物流の管理業務、物流の計画業務までアウトソーシングの裾野は広がっており、荷主企業のアウトソーシングへの取り組み姿勢が強まっている状況がうかがえる。
図-2 物流業務のアウトソーシングの現状と今後※
3.物流事業者集約の動きも
2005年9月にNX総研が実施したアンケート調査結果によると(2)、今後、利用する物流事業者数を「増やす」と回答した荷主企業が7%、「減らす」が9%となっており、一部の荷主企業において物流事業者を絞り込む動きがみられる。
利用する物流事業者数を「減らす」と回答した荷主企業がその理由としてあげているのは、「特定の事業者に一括して委託した方が効率的である」(60%)、「管理がしやすい」(26%)などである。
物流業務のアウトソーシングが広範な分野に広がるなか、それに対応して物流事業者を利用しようとする動きがある一方、利用する物流事業者を集約し、広範な分野を包括的にアウトソーシングしようとする動きもある。
物流業界においては、経営領域にまで踏み込んだ提案活動を行い、荷主企業の物流業務を包括的に受託する3PL事業への取り組みが広がっている。荷主企業にとってもサプライチェーン全体の効率性とコスト圧縮を追求するうえで、全体最適を実現する3PL事業者の存在価値は大きい。このような認識が荷主企業の間に広がるにつれて、物流事業者数を集約する動きは拡大していく可能性がある。
図-3 利用する物流事業者について
図-4 物流事業者を集約する理由
(2) 2005年9月下旬に荷主企業2,500社を対象にアンケート調査を実施し、1,220社から回答を得た(回答率48.8%)
4.物流事業者を選択する際には、「運賃・料金」と「品質」に加え「緊急時対応」を重視
荷主企業が物流事業者を選択する際に重視する要素としては、8割以上が「運賃・料金が低廉であること」および「物流サービスの品質に優れていること」を同列(83%)にあげている。次いで、「緊急時における対応に優れていること」(58%)を過半の荷主企業が回答しており、注目される。さらに、「商品や業界の慣習などに関する知識を有していること」(23%)、「経営状態が健全であること、業界内の評判がよいこと」(20%)などが続いている。
荷主企業が、物流事業者に低廉な運賃・料金と優れた物流サービスの品質を求めるのはきわめて当然のことであるが、リスク管理の観点から緊急時の適切な対応を重視する企業がかなり多いことが注目される。
物流事業者は、今後、いっそうの品質向上と徹底したコスト削減に加えて、事故や異常気象等にともなう輸送障害などで途切れないオペレーションの確保ができるような体制の整備が強く要請されよう。
図-5 物流事業者を選択する際に重視する要素※
(担当:経済研究部)
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