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【物流管理】荷主に求められる物流マネジメントとは

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取締役 兼 リサーチ&コンサルティングユニット4
ゼネラルマネージャー

井上 浩志

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荷主に求められる物流マネジメントは、①方針提示、②改善ポイントの仮説立て、③実施とチェックです。しかしながら、自社の物流実態が分かる人材が不足している企業では、改善提案が進まない状況が続いています。同じような境遇の方はこの記事をぜひ参考にして下さい。

物流マネジメントは機能していますか?

皆様の物流部で物流実態が分かる人はどのくらいいるでしょうか?2000年代中頃から盛んに行われた物流機能のアウトソースにより、多くの荷主企業では、自社の物流実態が把握できずに物流マネジメントまで深入り出来ない状況に陥りつつあります。そのため、物流業務やその管理を物流事業者への丸投げに甘んじているケースも多く見受けられます。

物流をコア業務と捉えていない企業では、確かに物流機能のスリム化は重要ではありますが、行き過ぎると頭脳もスリム化してしまいます。スリム化を念頭に入れつつも、本来、荷主が備えるべき物流マネジメントについて考えたいと思います。

意識合わせを行っていますか?

荷主の物流マネジメントとして、最低限行うべきこととして、期初の目標提示とその達成チェックがあります。コスト目標も大事ですが、それだけではありません。自分たちの物流が目指したい方向性と、それを達成するための重点テーマを委託先へ伝えることが重要です。例えば、図表1のような方針を委託する物流事業者へきちんと伝え、意識を合わせることが求められます。

図表1:年度の方針説明イメージ

図表1:年度の方針説明イメージ

このような方針の提示もなく、ただ単に、物流事業者へ「改善提案して欲しい」との依頼を行うケースはありませんでしょうか?このような場合、最終的に何の提案も出てこないのがオチとなります。物流マネジメントに優れる物流部門は、方針を示しながらもうまく宿題を与えています。しかも具体的な宿題です。この宿題により委託する物流事業者を上手く動かしています。

昨今「働き方改革」という言葉をよく耳にします。皆さんの職場でも何らかの宿題が出ているのではないでしょうか?働き方改革の目的は、組織や個人の生産性を高めるだけでなく、女性や高齢者の働き手や人口自体を増やすことで、国全体の生産性を高めることです。

例えば、働き方改革について、3名の上司から次のような指示が出たとします。
上司A:働き方改革へ繋がる施策を立案して欲しい
上司B:残業時間の抑制に繋がる施策を立案して欲しい
上司C:伝票入力処理の合理化施策を立案して欲しい

上司Aの指示ではあいまい過ぎて何をして良いのか判断に迷います。上司Bの指示であれば、残業時間の抑制へ貢献できる業務(時間を割かれている業務)を中心に効率化できないか取り組むことができます。さらに、踏み込んだ上司Cの指示の場合は、上司Cが伝票入力処理に時間が掛るといる事実を把握しており、その上で指示を出していることが分かります。取り組む側としても、既に絞り込まれた伝票入力処理の領域の検討で済みます。③のような指示であれば、少ない労力で高い成果の創出が期待できます。

提案して欲しいポイントを把握していますか?

荷主の物流部門においても同じことがいえます。委託する物流事業者へ提案を依頼するには、依頼者の中で事実なり仮説を持っていることがポイントです。とても優秀な物流事業者であれば、荷主が思いもしない改善提案を次々と立案するかもしれません。残念ながら、(ある意味では)自分たちの身を削ることになるような改善を、自主的に提案する物流事業者は非常にレアであるといえます。もし、そのような物流事業者に委託しているのであれば、永続的なパートナーとして大事にしてください。

物流事業者は、日々のオペレーションに追われており、全体を俯瞰した形で検討することが難しいのが実情です。直近では労働力不足が追い打ちをかけており、人材の確保に追われる管理者が増えています。結果、オペレーションを回すのに必死で改善提案どころではない、といった声も聞きます。

具体的で効果のある提案を求めたいと考えるのであれば、荷主自身が自分たちの物流の内容をきちんと把握して、事実や仮説(できれば数値を持って)を掴むことが必要です。具体的に改善指示を出すことで、物流事業者側も検討すべき内容が絞られ、活動への一歩が踏み出しやすくなります。

自分たちの物流と接していますか?

提案して欲しいポイントを荷主自身が把握するために、物流事業者への丸投げではなく、物量情報、コスト情報、KPI指標といった数値情報に常日頃接することが必要です。数値情報も全体をとらえるだけでなく、製品カテゴリー別、輸送モード別、拠点別などの「管理すべきレベル」で区分することが必要です。

また、数値だけでなく定期的に現場に足を運び、委託する物流事業者がどのようなオペレーションをしているのか、どのようなマネジメントで現場を動かしているのか、といった現場実態を理解することも重要です。これらを疎からにすると、自社の物流が徐々にブラックボックス化してしまい、物流事業者への丸投げ体質からの脱却は益々難しくなります。

まとめ

労働力不足を始めとして、物流を取り巻く環境は大きく変化しています。方針説明を行っていない物流部門や自社の物流実態から改善ポイントの把握ができていない物流部門はスグにでも始めるべきでしょう。大きく変化する環境へ対応していくには、抜本的な物流オペレーションの合理化も検討する必要があります。例えば、自動搬送システム、自動検品といったロボットやIT分野の知見も高めていくことも求められます。

本来、物流部門に求められる役割は多岐に渡ります。物流業務をコア事業としない企業においては、全てを網羅する必要はありません。最低限のマネジメントは、自社の方針を示すこと、実態を捉え改善ポイント仮説立てができること、それを物流事業者に実施させチェックすることです。それ以外の役割は、各社の物流機能の位置づけや人的リソースに合わせて見直していけば良いと考えます。文末の図表2は物流部門の役割を整理した表となります。 物流マネジメントを見直したい場合は参考にして下さい。

図表2:荷主に求められる物流マネジメント項目

図表2:荷主に求められる物流マネジメント項目
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