LogiMAT2023の視察レポート 第1弾
2023年4月にドイツのシュツットガルドで開催されたLogiMAT2023に参加しました。コロナ渦の影響で、海外のマテハン・ロボット関連のイベントに参加は実に4年ぶりでした。
最近の展示イベントは、実際の会場とWeb会場のハイブリッドで行われることが多くなり、ここ数年Web参加ばかりで、スケールの大きな展示会へ行ってみたいという気持ちが高まっていたので期待に胸膨らませて出国しました。
また久々の海外出張のせいか、ヨーロッパへ向かう飛行機の移動時間も非常に長く感じらました。加えて、ロシア上空が飛行できないこともあり、日本を出て北東へ向かい、ベーリング海を抜けてヨーロッパへ飛ぶ15時間にも及ぶルートになったのが旅程をさらに長く感じさせたのかもしれません。ヨーロッパへ行くのに日付変更線を越えるという経験も初めてでした。(帰り便では初めて北極点上を通過しました。)
ドイツ入国後は、NRW州の物流センターを2カ所視察した後、出張3日目にシュツットガルドに入りました。シュツットガルド中心部のホテルはメッセイベントの影響もあり、どこも満室で、15kmほどはなれた郊外のホテルで同僚2人とともに泊まることになりました。
写真1:LogiMAT会場入り口
さて、第1日目の朝、Sバーンでメッセ駅まで50分かけて移動し、早速ゲートから入場すると(事前にWebでRegistration完了済みなのでスムースにゲート通過)、3人で待ち合わせ時間だけ決めて解散し、その後は10ある展示場それぞれ興味のある棟へ分かれて行きました。
忘れてはいけないのが、LogiMATでは、同日内で1回退場すると再入場ができません。そのため、食事も会場内で取らざるを得ないので要注意である。(以前一度出てしまって、再入場できなくなり、別の未使用チケットを使って再入場した経験があります。)
まず、今回のLogiMAT2023をみた感想を述べさせてもらうと、「4年前とあまり代わり映えしていない」という印象が強い点であります。
2018年~2019年ごろは新しい自動化機器が百花繚乱で、ロボットを活用した様々なマテハン機器が登場し、見ていて結構ワクワクしたのだが、今回、特に注目されているような盛況なブースはなく、これまでのマシンのバージョンアップや高機能化が多く、目玉になるようなものはあまりありませんでした。もちろん、バージョンアップも進化ではあるのだが、Autostoreが登場した時のようなインパクトのあるマシンが見当たらないのは、少々物足りない感じがしました。
しかし1つ“おやっ“と思ったのがパワードスーツのブースがいくつも出ていたことです。6、7年前のLogiMATで日本製パワードスーツのVTRをブースで見せたところ、あるドイツのマテハンメーカー営業マンから、”この製品は10㎏しか持てなかった人が30㎏まで持てますよっていう労働強化だね“といわれてさんざんでした。しかし、最近、欧州でも認識が変わってきている様です。まず、特徴的なのは軽量化が進んだことです。以前は、スーツの自重で6~7㎏程度あったのですが、展示されていたものは2㎏程度のものが多く、装着の負担がかなり減っています。また、特定の姿勢などに特化したものが出てきており、製品が多様化してきたことも挙げられます。以前は荷物の持ち上げや積替えなどの荷役作業をターゲットにしたものが中心でありましたが、一定の姿勢を保つためのタイプ、腕を上方に上げる作業を保持するタイプなど、サポートするオペレーションによって製品を選べるようになっています。さすが労働安全衛生にうるさいヨーロッパの国でも労働力不足が進んできて、様々な労働負荷軽減対策を考えているようであります。
写真2:パワードスーツのブースがちらほら目につきます
取り扱うターゲットを限定するといった、機器の細分化傾向は、パワードスーツ以外のところでも感じました。いくつかのブースでも限定された製品に特化するAS/RS(Automated storage and retrieval system)がみられました。
昔は3PL企業を中心に汎用性のある機器が好まれる傾向もあったが、今回、アパレルのみに特化したもの、医薬品に特化したもの(ただ、使いようによっては別のもので利用できることはできるのですが・・・)など、特徴的な機器が紹介されていました。
Planiform社のハンガー品自動倉庫などはその一例です。これまで、国内のアパレル物流センターでは、ハンガー品の取り扱いを完全自動化することはなかなか難しく、実現した例はわずかでした。(ハンガーレールシステムのように、センター内に搬送ラインを張り巡らせているケースはあります。)
このシステムは、1ハンガーで1ロケーションを持ち、対象とする商品のハンガーをアームで抜き取りピックする、それも両隣のハンガーにかかった商品をアームで選り分けてから目標を抜き取ります。これは、非常に面白いシステムであります。また製品1着とロケーションが1対1に対応するので、1着毎の認識が容易で、人がロケから選び出すといった作業がなくなり自動化を進めやすくなります。一方でアパレル製品以外には使えないのがデメリットになります。しかし特定の製品にターゲットを絞って開発された製品は、高い生産性を実現できるため、メーカーや荷主が物流に参入してくる最近の状況においては、自社製品に適合したマシンを導入する事例が増えてくることが想定されます。
写真3:Planiformのハンガーピックシステム
また、AMI社のSMART-FLEX DEPOTは医薬品に特化したシステムで、これもやはり1ピース単位で保管場所を管理している点が特徴的であります。ピンポイントでトレーに保管された商品1ピースをピッキングしてくるのです。通常の倉庫では、1つのロケーションに同SKUの商品が複数保管されていて、そのうち引き当てがかかった個数だけ人が選りすぐって取ってくる必要がありますが、これもアパレル同様に複数の中から必要個数選び出すという行為は必要ありません。
写真4: SMART-FLEX DEPOTのピック部分
そこで、改めて考え直してみると、今回紹介したマシンのように、対象が限定されるものが多く出てきて、マテハンの多様性が高まることで、ベストセラー的な汎用性の高い自動化システムの新製品が少なくなってきたのではないかと思いました。これはあくまで仮説でありますが、今後もこの動向については注視していきたいと思います。
紹介したマシン以外にも個性的なものは多数展示されていたので、次回ご紹介します。
写真5:LogiMAT会場の様子
(この記事は2023年8月21日時点の状況をもとに書かれました 。)
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