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「在職老齢年金制度」とは? 物流業界でも高齢者を活用し人手不足解消に繋げよう!

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はじめに

2020年の6月に高齢者の働き方に影響を与える「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立しました。「年金なんて会社を退職してからもらうので会社が深く関わることはない。」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。実はそうも言ってはいられないのが現在の状況です。現行の高年齢者雇用安定法では、事業主に対して、65歳まで定年延長などの高年齢者雇用確保措置を義務化しています。それが2020年3月の改正で70歳まで努力義務とする法律が成立しました。年金は原則として65歳から受給できますが、65歳前から一部を受給できる方がいます。今後年金をもらいながら会社勤めする人が益々増えてくることになります。今回は、公的年金制度のしくみにふれてから、高齢者が働きながら年金をもらう制度「在職老齢年金制度」を説明します。
物流業界においても、今回の年金改正を踏まえたうえで高齢者を有効活用し、人手不足解消につながれば幸いです。

公的年金制度のしくみ

公的年金は、世代と世代で支え合って成り立っています。(図表1参照)
現役世代は親世代を支える為に保険料の納付義務があり、20歳になると日本国内に住むすべての人は国民年金に加入し保険料を納付します。

図表1

図表1

出典:厚生労働省HP

「私は会社員で今まで国民年金の保険料なんて払っていない。」と言われる方が、いらっしゃると思います。会社員や公務員の方は働き始めると厚生年金保険に加入し厚生年金保険料が給料から天引きされ国に納められます。その保険料の一部が国民年金に回されます。その為会社員や公務員の方は、基礎年金(国民年金の部分)と厚生年金の両方を受け取ることができます。自営業者の方から見ると羨ましい制度です。(図表2参照)

図表2

図表2

出典:厚生労働省HP

ワンポイント
年金の3つの保障:年金というと老後に受け取る老齢年金を思い浮かぶ人が多いとおもいますが、家族の働き手が亡くなった時に一定の遺族が受け取れる遺族年金、病気やケガで障害が残った場合にその障害の程度によって受け取れる障害年金の3つがあります。

年金はいつからもらえるのか?

年金は原則として65歳から受け取ることができます。「自分の親や先輩は60歳で定年した時からもらっていたよ。」という方もいらっしゃると思います。以前は確かにそうでしたが、高齢社会に対応する為65歳からに改正されました。いきなり65歳にする訳にはいかないので、受け取る時期を段階的に遅らせる経過措置が設けられました。例えば昭和33年生まれの男性の方は63歳になると一部を受け取ることができます。
下記のURLは日本年金機構のHPにある支給開始年齢の早見表になります。自分の誕生日のところ見て頂けるともらえる時期がわかります。
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/20140421-02.files/ichiran.pdf (2020/12/2現在)

年金はいくらもらえるのか?

自営業者の方は、保険料を20歳から60歳まで40年間全額納めれば基礎年金の満額781,700円(年額・令和2年度)もらえます。会社員、公務員の方は、学生の期間がある方はその期間は保険料を自分で納めて、60歳まで勤めれば、基礎年金の部分は同額がもらえます。更に厚生年金の部分が上乗せされてもらえます。厚生年金の額は受け取る給料によって納める厚生年金保険料も違う為、給料に比例して変わります。誕生日月に「年金定期便」が送付されてきますので、目安の金額がわかります。

ワンポイント
私は昭和42年生まれだけど年金は65歳にならないともらえないのか?
年金には支給を繰り上げたり繰下げたりする制度があります。60歳~64歳の間で繰り上げてもらうこともできます。例えば60歳でもらうことも可能です。但し1ヵ月繰り上げるごとに0.5%減額され、0.5%×60か月=30%減額されることになります。繰り上げてもらう場合はその他にもデメリットがありますので、注意が必要です。

現行の在職老齢年金制度

年金をもらいながら厚生年金保険に加入し会社勤めをしている人がいます。この在職老齢年金制度は会社勤めをしながら一定以上の給料を得ている人は年金を少し我慢してくださいと、もらっている給料が多ければ年金をカットする制度です。
65歳未満で年金をもらっている人ですと、
1ヵ月当たりの年金(基本年金月額)給料(標準報酬月額)その月以前1年間の賞与の12分の1が28万円(基準額)を超えると年金の一部または全額カットされます。
在職老齢年金制度について、厚生労働省年金局「年金制度に関する総合調査」(2019年)によると、「60歳台の第2号被保険者の在職老齢年金制度と就労についての意識」で60~64歳の56.4%が「年金額が減らないように、収入が一定額に収まるように就業時間を調整しながら働く」とし、65~69歳でも約4割を占めています。高齢者の就労に与える影響がこのように一定程度確認されています。

今回の在職老齢年金制度の見直し

今回、60歳~64歳の基準額28万円を見直し65歳以降の基準額と同じ47万円に引上げをおこなう改正がなされました(2022年4月施行)。1ヵ月当たりの年金と1ヵ月の給料(賞与も12分の1して含める)の合計が47万円を超えたら一部または全額カットと枠が広がりました。引上げを行うことで以前より給料を多くもらっても年金が一部カットされたり全額カットされたりする人が減り、就労時間を調整したりせずに頑張って働く人が増えるということになります。

年金制度機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要

(厚労省HPより:一部筆者にて要約)

現行   ⇒支給停止対象者数 約37万人/全額支給停止対象者数 約16万人
見直し  ⇒支給停止対象者数 約11万人/全額支給停止対象者数 約5万人

その他の主な見直し

(1)老齢厚生年金の受給権を取得した後に就労した場合は、資格喪失時(退職時・70歳到達時)に、受給権所得後の被保険者であった期間を加えて年金額の改定をしていましたが、高齢者の就労が拡大する中で、就労を継続した効果を早く年金額に反映するために、65歳以上の者については、在職中であっても年金額の改定を毎年1回行う。(2022年4月施行)

(2)被用者保険の適用拡大に係る見直し
短時間労働者への適用拡大⇒企業規模要件の見直しのスケジュールを明記
2022年10月に100人超規模、2024年10月に50人超規模の企業までに適用する。

最後に

総務省統計局の高齢者の人口よりますと、「我が国の総人口(2019年9月15日現在推計)は、前年に比べ26万人減少している一方で、65歳以上の高齢者の人口は3,588万人と前年に比べ32万人増加し総人口に占める割合は28.4%と前年(28.1%)に比べ0.3ポイント上昇し過去最高」となっています。また高齢社会白書では65歳以上人口は2040年頃にピークを迎え減少に転じるとされまだまだ高齢化が進行します。(図表3参照)

こうした中で政府が推進する「一億総活躍プラン」を実現する為には高齢者の雇用、働き方が重要なキーポイントとなります。企業としても今回取り上げた年金制度の改正や働き方改革関連法を踏まえて高齢者が納得して、元気に働くことができる職場や制度設計を推進することが重要です。
是非、元気で就労意欲のある高齢者を活用し人手不足解消に繋げてみてはいかがでしょうか。

図表3

図表3

出典:令和元年度版高齢社会白書(概要版)

(この記事は2020年7月21日時点の状況をもとに書かれました。)

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