シリーズNX総研社長が語る7 新社長ヒストリーとご挨拶

皆さん、初めまして。NX総合研究所の鈴木と申します。2025年1月より社長に就任し、はや3か月がたちました。ブログの掲載がノルマだといわれて、何を書くか考えてみたのですが、直接物流に携わった経験の少ない身の上でどうすれば読者の方の興味を引く文章が書けるのだろうと悩んでおりました。悩んでばかりいても仕方がないので、自分の知識・経験を交えて少し目線を変えた物流の見方を書いてみたので、少しでも皆様の参考になればと思います。
本編に入る前に若干、小生の経歴について述べさせていただきます。日本通運への入社は1992年(平成4年)で、最初は名古屋国際輸送支店西名古屋営業支店営業1課に配属となりました。事務所は、名古屋港の西側、岸壁まで数十メートルという立地でした。ここで4年ほど国際輸送実務を経験して、以降30年近く経理部門に在籍したのち、縁あって、NX総合研究所に在籍することになりました。
物流会社の現業経理について
経理部門のスタートは、名古屋国際輸送支店の経理課からでした。いわゆる現業経理というものになります。経理課の業務としては、伝票処理を行う会計業務、銀行の入出金や本社との資金の受払を行う資金業務、課所や支店全体の業績管理を行う主計業務、建物や車両といった固定資産の管理を行う管財業務の4つが主な業務でした。このうち、主計業務・管財業務を主に担当することになりました。
まず、主計業務についてですが、毎月、業績速報の集約、業績概況の本社への報告、支店内の見通しの集約などを行っていました。それ以外では、通常の業績帳票(収支管理表)に加え、損益分岐点分析表の作成を行い、変動費管理を徹底するよう指導を行っていました。 予算については、各課所に責任利益を負荷する独立採算制を採用していましたが、倉庫オペレーションを専業として行っている現場などについてはコストを支店全体で賄う趣旨でゼロ予算を基本としていました。売り上げをあげている営業課所とコストセンターである現場課所とは社内勘定で決済を行い、それぞれ収支管理を行っていました。
もう一つ、主計担当の大事な業務として、諸税金の計算がありました。車両にかかる自動車税、重量税などの計算・経理処理については、業務課が行っていましたが、事業所税や償却資産税などについては経理課が行っていました。事業所税のうち、従業者割については人件費を基に算出、資産割については事務所等の面積を基に算出していましたが、物流施設については、税法の規定により、免税、課税標準の3/4、課税標準の1/2などに分かれるので、拠点別に一覧表を作成して、税額を間違えないようにする必要がありました。償却資産税については、市町村税であるため、対象となる固定資産の所在地を正しく把握しておく必要があります。特に、フォークリフトなど移動が可能なものは拠点間で移管を行うことがあるので定期的に現場に行って確認をするようにしていました。棚卸・現物確認をきちんとしないと納税先を間違えたり、納税額に過不足が出たり、するので気を付ける必要がありました。
次に、管財業務についてですが、物流業は装置産業であるため、固定資産に関する経理処理は支店の業績に大きく影響します。新しい固定資産を取得すれば、固定資産台帳に登録を行い、月々の償却金を計算する必要がありました。償却金以外に大きく費用が発生するものとして修繕費があります。車両の修繕は公共の道路を走行するという事情もあるため、必要なものは直ちに行うようにしていましたが、倉庫については、工事が長期間になったり、高額な修繕になったりするものもあるので、税関のインベントリーや支店業績に影響が出ないよう実施時期について気を付ける必要がありました。倉庫以外では、私有岸壁の修繕が一番の難題でした。岸壁はかなり老朽化していたため、作り変えるという選択肢もあったのですが、費用が何十億とかかることや工事期間中岸壁が使用できなくなることなどを勘案して、延命措置を施すこととしました。矢板式の岸壁だったので、電気防食により鋼矢板の腐食を防ぐ工事を行いましたが、それでもかなり高額な工事となりました。 倉庫拠点や倉庫自体については、色々と問題が多く思い出深いエピソードもあるのですが、書き始めると長くなりそうなので別の機会にご紹介できればと思います。
物流会社の経理について
2004年に本社の経理部門へ異動になって以来、合計で15年ほど本社経理部門に在籍していました。会社の個社決算の担当を6年、予算編成や資本政策といった経営財務の担当を9年経験しました。個社決算に関しては、そもそも会計ルールがあり、これに則り経理処理を行っていたので、物流会社だからといって他の会社に比べ大きく変わる要素はあまりなかったと思います。基本的には四半期ごとに決算を行い、決算の結果を連結決算担当に渡すことと四半期ごとに監査法人の監査およびレビューの対応を行うことが主な業務でした。当時監査を担当して頂いた新日本監査法人の方には大変お世話になりましたが、中でも大変ご苦労を掛けたのが、有形固定資産の償却方法を定率法から定額法へ変更する時でした。変更理由を疎明するためにかなり詳細な資料を作成しなければならなかったことが大変でした。
経営財務に関しては、所管する部門に3度在籍しましたが、最初は本社経理部予算担当、次に本社財務部予算担当、最後にHD財務企画部と在籍時期ごとに名称が変わりました。時代とともに求められる役割が少しずつ変わっていった結果なのかなと感じています。本社経理部予算担当として着任して、一番初めの仕事は、「経済と貨物輸送の見通し」の社内説明会の司会でした。このレポートは、当社が、「日通総合研究所」時代の昭和49年に公表を開始して以来、50年以上にわたり公表し続けているレポートです。最初の在籍では、主に個社の予算策定と設備申請の受付が主な業務でした。経営管理のKPIとしてEVAが流行っていた時代で、日通もこれを基準とした予算策定を行っていました。決算業務と違い、決められたルールの様なものは無いので、会社の実情に合わせ経営管理を行っていました。
それ以外の業務としては、倉庫などの建物設備投資案件の稟議受付がありました。倉庫については、支店によって申請してきた計画の精度に大きく差があり、稚拙な計画に対しては何度も問い合わせをしたり、計画の修正を依頼したりして、時間をかけて進める必要がありました。ただ、何件稟議をこなしても、計画の実現性を見極めるのは難しいと感じていました。
予算担当として在籍中に取り組んだ施策の中で印象に残っているのが、「資産のリストラ(クチュアリング)」という施策です。先に述べたように、倉庫などの修繕は一時費用として業績に大きく影響が出るので、なかなか実施できていない状況がありました。経営層の方が、拠点視察に行かれた際に、拠点の整備が行き届いていないことに危機感を覚え、施策の実施にいたったと記憶しています。倉庫などの建物の修繕や拠点の環境整備にかかった費用を本社で負担することにしましたが、今では同じような判断はなかなかできないのではないかと思います。
と、記憶の限り、書いてみましたがいかがでしたでしょうか、あまり参考にはならなかったかもしれませんが、物流会社の経理担当がどんなことをしているのか関心を持ってもらえたら幸いです。
(この記事は2025年3月31日時点の状況を基に書かれました。)
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