物流効率化法対応として発・着荷主が取組むべきこと

1.物流総合効率化法の改正に至る背景と概要
「物流の2024年問題」は2025年以降本格的に深刻化すると見込まれます。時間外労働上限規制が自動車運送業の運転者等にも適用されたことで、トラック運転者の長時間労働は改善が期待される一方、運転者の長時間労働に依存してきたトラック輸送力の減退は避けられません。何も対策を講じなければ、物を運べなくなる事態が多発することが危惧されます。
そうならないよう、国は様々な対策を講じていますが、そのための法整備として、2024年に「物流総合効率化法」「貨物自動車運送事業法」の物流関連2法の改正が行われました。
このうち物流総合効率化法の改正は、様々な事業者に対し、非効率な物流を改善する努力義務を課すものとなりました。元々の物流総合効率化法は、複数事業者が連携して物流を行う取組を支援し、輸送の合理化や省力化を促進することを目的とする法律でした。今回の改正はそれに加えて「トラック運転者の運送や荷役等を効率化する」ことをもう一つの目的として追加し、そのために荷主や物流事業者等を中心に様々な事業者に努力義務や規制的措置を課す各種条項が追加されたものです。特に荷主企業には様々な取組を行う必要が生じます。この改正に伴い、法律の名称も「物資の流通の効率化に関する法律」(以降「物流効率化法」と表記)と変更されました。
物流効率化法が課す努力義務や規制的措置の具体的内容の多くは省令や政令で定めることとされていますが、その内容の方向案が国土交通省・経済産業省・農林水産省の関係審議会等の合同会議で策定され、2024年11月に「合同会議取りまとめ」として公表されました。これを基に、物流効率化法のうち2025年4月1日に施行される規定に関係する省令等が2025年2月に公布されました。
本稿では物流関連2法のうち「改正物流総合効率化法」を対象として、運送や荷役等の効率化を目的とした改正内容や省令、および合同会議での「取りまとめ」の主なポイントを、荷主に関するものに絞って確認します。なお以降本稿では、改正物流総合効率化法について「物流効率化法」又は単に「法律」と記します。
2. 「物流効率化法」で追加された規定
物流効率化法で追加された規制的措置に関する主な内容は、次の通り要約されます。
(1)2025年4月1日に施行される規定
- 荷主・物流事業者をはじめ物流に関係する全ての事業者が、それぞれの立場で物流効率化のために取組むべきこと(「講ずるべき措置」)について「努力義務」が課されます。この「措置」の内容については、国が「判断基準」を示します。
- 「措置」の取組状況について、国が必要と認める場合には、「判断基準」に基づき、国が「指導や助言、調査や公表」を行います。
(2)公布後2年以内に施行される規定(2026年度初めに施行される予定)
- 一定規模以上の事業者を「特定事業者」とし、(1)の講ずるべき措置の実施について「中長期計画作成」「定期報告」を義務付けます。この中長期計画の実施状況が不十分の場合、国が勧告・命令を行います。
- 荷主(着荷主も含む)である「特定事業者(特定荷主)」には「物流統括管理者(CLO)」の選任が義務付けられます。
3.2025年4月1日に施行される規定関係
2025年4月1日に施行される規定は、取扱貨物量の大小に関わらず、物流に関係するすべての事業者に対し、物流効率化のための取組措置について努力義務を課すものです。
(1)「荷主」の定義
法律では、運送契約の当事者であるか否かの違いにより「第一種荷主」と「第二種荷主」の2つが定義されています。
- 第一種荷主…トラック運送事業者(利用運送事業者含む、以下同)と運送委託契約を結び、貨物の発送や受取を行う事業者
- 第二種荷主…運送事業者を通して貨物の受取や発送を行うが、運送事業者との契約当事者ではない事業者
貨物発送者(発荷主)だけでなく、納品先として貨物を受取る着荷主にも努力義務や規制的措置が課されることに注意が必要です。発荷主が第一種荷主となることが一般的ですが、引取物流等の場合では着荷主が第一種荷主、発荷主が第二種荷主となります。以降、第一種荷主と第二種荷主を分けて説明する必要が無い、限り荷主と記します。
(2)運送や荷役等の効率化の目標
「運転者の労働時間」「荷待ち・荷役等時間」「積載効率」について、運送・荷役の効率化に向けて国全体で達成すべき目標が「基本方針」として掲げられています。これらの目標達成に向けて、荷主や物流事業者等、様々な事業者が協力して取組むことが要求されています。
(3)荷主に努力義務が課される「講ずるべき措置」と、それに対する国の「判断基準」
荷主が「講ずるべき措置」として、「積載効率の向上(一運送ごとの貨物重量増加)」「荷待ち時間の短縮」「荷役等時間の短縮」の3点を目指すことと、「これらの取組の実効性を確保するための社内体制整備や関係事業者との連携」を図ることの、計4点が挙げられています。
そのための具体的な取組は、各荷主が業務の実情に応じて有効な方法を検討することとされていますが、荷主がそのための取組を考える上での「判断基準」として、省令では次の事項を挙げています。
(4)荷主等の取組状況の「調査・公表」
荷主等の取組状況をどのように調査するかは、本稿執筆時点(2025年2月)では明らかにされていませんが、「取りまとめ」では、荷主等を対象とした網羅的調査は困難であるため、荷主と物流事業者の関係を崩さずに実態を聴取することを前提に、トラック運送事業者をはじめとする物流事業者を対象として、発・着荷主の取組状況をアンケート調査によって確認することが提起されています。具体的には以下の内容です。
本ブログはここまでとさせていただきますが、この続きとして、2026年度初めに施行予定の「特定荷主」を対象とした規定の具体的内容に関する「合同会議取りまとめ」のポイントや、この法律施行を契機に検討をお奨めしたい事等を含めた全編を「お役立ち資料」に掲載しております。是非こちらからご覧ください。
(この記事は、2025年2月25日時点の状況をもとに書かれました。)
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