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物流案件を進める上で必要なプロジェクト・マネジメント スキル

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2025年を迎え我々物流事業者、新たに立ち上がる案件も多くあるのではないでしょうか。今回は、物流案件を進める上で必要なプロジェクト・マネジメントのスキルに関して考察してみたいと思います。

有効なスキルツールは色々ありますが、主には①プロジェクト憲章、②コミュニケーション計画、③WBS(Work Breakdown Structure)、④RAM(Responsibility Assignment Matrix)、⑤チームビルディング、⑥教訓の蓄積です。また、初めから全てを完璧に準備しようと考えると行き詰まりますので、まずは①プロジェクト憲章の準備、そして、スモールスタートで取り掛かることがポイントです。

一般的にプロジェクトの特徴を示すと、①有期性(始まり/終わり)がある、②独自性(独自/ユニークな要素)がある、更には③段階的な詳細化(進む上で詳細が見えてくる)と言われています。そこで、我々物流の業務案件、例えば、倉庫の選定・フロー構築、WMS(Warehouse Management System)の導入、引越し・移転作業、等の業務はどれも、契約締結~受け渡し、顧客要望・規模の大小から発する様々な条件、初めは見えなかった要件が案件進捗上で詳細化する、これらを鑑みるとプロジェクトそのものと言えるのではないでしょうか。また、意外とステークホルダー(利害関係者)が多いことも物流案件の特徴と言われています。

一方、それらの業務を行う人員のプロジェクト推進に関わるプロジェクト・マネジメントのスキルはどの程度なのでしょうか?少し前ならば、人的リソースの追加・変更、経験値の優位性、根性馬力をもって乗り切ればなんとかなる!と考えた人も多く見られ、上手く回ればそれで良いですが、案件が複雑で規模が大きくなればなるほど上手く回るわけは無く、暗礁に乗り上げて組織がてんてこ舞いになるケースを何度か見ているのではないでしょうか。

それでは物流案件を進めて行く上で有効なスキルツール6つを、下記にて簡単にですが見て行きたいと思います。

①プロジェクト憲章の作成:

最初に行うことで、プロジェクトを立ち上げる上で必須の書になり、プロジェクトリーダーを中心に作り上げることになります。具体的にどのような項目を記載するかですが、

  • プロジェクト名、
  • プロジェクト背景/目的、
  • 最終成果物、
  • 目標予算/納期、
  • 終了条件、
  • プロジェクト組織/メンバー、
  • その他固有の必要事項、

この中で曖昧になりがちな事項は終了条件で、例えば「顧客側の関係部長さんによる検収書サイン」のようなカタチで具体的に示す必要があります。プロジェクトマネージャーは該プロジェクトを終結させて、関係メンバーの開放と次プロジェクトへの配置責任があります。

②コミュニケーション計画の作成:

弊社でプロジェクト・マネジメント研修を過去何度も行いましたがその際に「コミュニケーション計画の策定、コミュニケーションを効果的に行う為にまず必要な事は何ですか?」の質問に即答出来る人はほとんど居ませんでした。答えは、「ステークホルダーの特定」です。コミュニケーションは誰に対して行うものか?と言えば、それはステークホルダー(利害関係者)に対してであり、彼らに対し適切にコミュニケーションを行わなければ不満が噴出し、プロジェクトが上手く回りません。なので、ステークホルダーの特定は重要事項で、物流案件はステークホルダーの数が多いとも言われていますので、慎重に行う必要があります。コミュニケーション計画では、例えば以下の様にステークホルダー別に計画します。

③WBS(Work Breakdown Structure)の作成:

プロジェクトを進める上で必要な作業を過不足なく含め(モレなくダブリなく)、プロジェクトの範囲(スコープ)を明確にする図となります。
必要な作業項目を構造的に示すことがポイントで、出来上がったものを関係者間で共有することが出来ます。基本的にここに示されている必要事項を行うことが鉄則で、それ以外の事を行ってしまうとプロジェクトが膨張(スコープクリープ)する危険に繋がります。
ごく簡単ですが、プロジェクトを例えば「新サービスを考案する」ことと見立て、次のようなイメージ図例を示します。

WBSの作成に関しては色々と解説書等が出ていますので、それらを一読されますと作成のポイントを把握出来ますのでお勧めです。

④RAM(Responsibility Assignment Matrix)の作成:

プロジェクトメンバー及び関係者の責任範囲と関係性を示すものになります。WBSとセットで考えてゆきます。

上記①②③④はプロジェクトを推進する上では是非とも準備することがお勧めで、またこれらをプロジェクトメンバー間で共有しましょう。プロジェクト・マネジメントのツールは、ほとんどが情報共有化のツールとも言われています。

⑤チームビルディング

結束の固いプロジェクトチームをどの様に構築したらよいのでしょうか? プロジェクト・マネジメントでは、チームの特徴を「目的に沿った活動や意思決定が出来る、相互依存の関係にある」と説明されています。チームビルディングとは、「プロジェクトチームを単なる集団から効果的な結束を持ったチームに作り上げること」とされています。また、結束有るチーム形成の過程を何段階かで示す表現があり、それらは、・集団の形成、・嵐の状態、・チームの意思形成、・目的志向での行動、とされ、嵐の状態を乗り越える必要があります。私は昭和生まれの人間でよくホームドラマを見ましたが、皆さん少しホームドラマを回想出来ますか?例えば、家族で何かのイベントがある→家族のメンバーがそれぞれ言い分を主張する→家長の言い分に反発が発生し家族にある意味の嵐(カオス)が発生する→そこで家族員が冷静に状況を鑑みる→徐々に理解や協力が生まれる→家族の結束が出来る。まさにこの流れがチームビルディングの流れで、そういう意味では嵐の状態を必ず踏むことになります。

⑥教訓の蓄積

プロジェクトの結果を分析・評価し、それらをなんらかのカタチで残す必要があります。プロジェクトの推進上では、必ずうまく進まなかったことや反省点が多々あります。それらの点を、プロジェクト最終報告書の様なもので残し、次回以降のプロジェクトや類似プロジェクトの推進時に参照出来るようにしましょう。

最後に、アサーションに少し触れたいと思います。
プロジェクト・マネジメントのツールはコミュニケーションを円滑に行う為のツールで、コミュニケーション(対話)が大きなカギになります。その為、プロジェクトマネージャー、メンバー双方にコミュニケーション上でストレスが発生することも十分に想定出来ます。そこで、良好な人間関係を構築し、円滑なコミュニケーションを行う為のスキルがアサーションになります。アサーションは、「自分も相手も大切にする自己表現」で、「自分の考え、欲求、気持ちを、率直に、その状況にあった適切な方法で伝えるスキル」です。繰り返しですが、物流業界は、ステークホルダー(お客様、関係役所、地域社会、社内、他)が多い業態とも言われ、相手を尊重し自分の意見を伝える機会が多く、アサーションのスキルがとても役立つと考えられます。

今回ご紹介のツールが、皆様のプロジェクト推進上でご参考になりましたら幸いです。
また、「初めからこれらを整えることは難しいですよ!」と言う意見も研修時によく耳にします。冒頭でお話したポイントを繰り返しますが、その時にお伝えしていることは「どんなプロジェクトでもまず必ず①プロジェクト憲章は準備しましょう」、そして「大きなプロジェクトでいきなり取り掛かるのではなく、まずは少人数で行う業務推進からプロジェクト・マネジメントのスキルを使ってみましょう!(スモールスタート)」と言う事もお伝えしています。2025年、皆様のプロジェクトが成功裏に収まることを祈念します。

(この記事は2025年1月7日時点の状況を基に書かれました。)

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