航空機に搭載される貨物輸送用コンテナ(ULD)とはどんなものか?
国際航空貨物運送のスペシャリストの戸澤が、空輸貨物の機材(ULD)について、基本的な知識を解説します。
私たちが普段乗っている旅客機でも、貨物が見えない所で安全第一に効率良く管理されています。空港などで見かける航空貨物輸送用のコンテナですが、その中に貨物や手荷物、郵便物を収納して航空機に積み込むということ以上に、それがどのような機材なのかをご存じの方は少ないのではないでしょうか。
航空機に貨物を搭載するときに使われるULD
航空機に貨物を搭載するときに使われる機材はULD(Unit Load Devices)と呼ばれます。古くは、航空機への貨物の積み込みと取り卸しは一個一個手作業で取り扱っていましたが、航空機の近代化と大型化にともない、貨物の集約化と作業の機械化によって駐機中の荷役時間を短縮したり、荷役中における損傷や紛失を防止したり、貨物を天候から守ったり、さらには丸みを帯びた断面をもつ航空機の貨物室の形状に合わせて貨物搭載効率を向上させるといったメリットを生み出しています。
ULDの種類
ULDは大きく分けてコンテナとパレットに分類されます(図1)。両者とも一般的にはアルミニウムなどの軽くて丈夫な材質で製造され、箱型のコンテナの場合は内部に貨物を積載したのちにドアや幕で閉じて使用されます。それに対してパレットは板形状のULDで、そこに積みつけた貨物を専用のネットで固縛して使用されます。航空機のタイプごとに貨物室の床の仕様や貨物室の断面の形状が異なるため、コンテナとパレットは搭載する航空機の機種に適合するように、世界共通の規格に基づいて様々な種類のものが製造されています。ULDは着脱が可能な航空機の部品という位置づけになっていて、貨物室の床にはULDを航空機に固定するためのロック、また荷役時にULDを容易に移動させるためのローラーといった装備が施されています。
ULDの安全性
ところで航空機はご存じのように、空中を高速で移動するという特性を持っています。「空中を高速で」という特性は他の交通機関に比べて危険性の高いもので、例えば飛行中に航空機に故障や損傷、火災が発生した場合に、乗員乗客はその場から避難することのできない環境におかれます。また航空機が落下した場合には、乗員乗客はもとより空港周辺や飛行経路上の地上にも計り知れない被害をもたらします。そのため、飛行中に想定される故障、強い振動や急降下、急上昇、急激な減圧、火災の発生といった過酷な状況においても航空機の操縦や安全性が保たれ、一定時間内までに緊急着陸ができるように航空機とその装備品には、材質の強度、設計、構造など厳しい要件が定められていて、その耐空性に適合しなければ飛行することが禁止されています。そのようなことから飛行機は安全な乗り物であるということが言えるのだと思います。
前述の「過酷な状況」に遭遇しても、ULDがロックからはずれて航空機の重心に影響を与え、あるいはULDが機体の壁を損傷させたり、コンテナの中から貨物が飛び出して機体に損傷を与えたり、貨物室内で発生した火災が延焼したりしないように、厳しい基準を満たしたULDのみが搭載を認められています。
ULDには「AKE12345JL」というような番号が表示されています。最初のアルファベット3文字はそのULDの種別や認証の有無、底面のサイズ、断面の形状を表しています。次の5桁の数字は保有する航空会社がつけるシリアル番号です。最後のアルファベット2文字は保有する航空会社のコードを表しています。
次回のご旅行で搭乗までの待ち時間があったときに駐機場まわりの動きに目を向けてみたら、限られた時間内に行われる効率的な作業の流れや特殊機器にあらためて関心を持たれるのではないでしょうか。
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