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毎年恒例の物流先端技術のお祭り 「LogiMAT 2018」

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リサーチ&コンサルティングユニット3
ゼネラルマネージャー

白橋 徹也

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日通総研ニュースレター ろじたす 第36回(2018年4月23日号)

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【Logistics Report】毎年恒例の物流先端技術のお祭り 「LogiMAT 2018」

行ってきました、LogiMAT2018。LogiMATは、ドイツのシュトゥットガルトで開催される物流システム・マテリアルハンドリング機器等の国際展示会で、欧州最大の物流展の一つです。
今年は日通総研の3名が、3/13~15の3日間で視察しました。展示会の概要と先端技術を使用したピッキングロボットを中心としたトピック、自動化技術の導入について思うところをレポートします。

1.既存の技術も混在する物流展

LogiMATは9つの巨大なホール毎に、それぞれ大きなテーマに分かれて展示がされています。冒頭のタイトルは “物流先端技術のお祭り”となっていますが、全てのホール・ブースが先端技術に特化しているわけではなく、“既存技術・性能の進化版”の展示ブースも少なからず存在します。
例えば、より一層エコな材料を使用したパレット / 少し工夫を凝らした荷物のラッシング(固縛)機器 / 超高速緩衝材製造機(しかし超巨大で超うるさい) / 座り疲れを軽減する作業椅子等々。来場者それぞれの興味関心次第ですが、私達はこれらについてはチラ見しかしていません!
ただ一点、従来から存在しますが、倉庫内の搬送機器としてオーバーヘッドコンベア(天井懸架式)を複数社が展示していたのは少し意外でした(写真1)。現状では、アパレル・オフィス用品・化粧品等、荷姿・形状が異なる様々な商材への適用が容易との理由で、通販系物流センターへの導入が多いそうです。

写真1: SSI SCHAEFER社の“SSI CARRIER” 搬送方式自体は従来からあるもの

写真1: SSI SCHAEFER社の“SSI CARRIER”
搬送方式自体は従来からあるもの

2.省人化・自動化にフォーカスしたマテハン機器類

私達が今回も時間をかけて視察を行ったのは、先端技術を利用したマテハン機器類です。倉庫・物流センター内の各作業工程の自動化機器は一通り網羅された展示になっています。

保管&棚・Bin(容器)出し

日本でもすでに導入され、世界中で実績を積み上げて導入が検討される定番となっている“AutoStore”をベースとし、その他の自動化機器を組み合わせたインテグレーター複数社の展示が目立ちました(写真2)。

写真2:“AutoStore”と個品ピッキングロボットをみ合わせたSwisslog社の展示

写真2:“AutoStore”と個品ピッキングロボットをみ合わせたSwisslog社の展示

保管&庫内搬送

こちらも最近話題となることが増えている“Butler”。ピッキング作業を体験しましたが、商品が何であるかを全く意識することなく、モニター表示に従い、良い意味で誰でも最小限の教育の下でピッキング作業が可能です(写真3)。

写真3: GREYORANGE社の“Butler”

写真3: GREYORANGE社の“Butler”

庫内搬送

いわゆるAGVの展示ブース数は非常に多い状況でした。動作速度としてはまだまだ緩慢に感じられますが、各社とも導入の容易さ(レーザー誘導方式の場合の反射板設置数の削減)や、倉庫全体の機器制御システムとの統合による可視化実現を謳うものが多いです。

3.ピッキングロボットに関するトピック

そんな中、ピッキングロボットについては、据え置き型の多関節アーム式タイプのロボットを5種類程じっくり見て来ました。
特徴としては、いずれの機器も画像認識技術を駆使して、“取るべきアイテムを確実に掴む”能力を高めている点があげられます(誌面の都合上細かいスペック等の説明は省略します)。例えば、アーム先端が吸盤式のアタッチメントの場合、ピッキング対象物の重心位置によっては上手く吸着できずにミスピックとなる場合が発生します。しかし、Swisslog社のソリューションでは、新商品のピッキングを行う場合、まずは通常正しいであろう吸着ポイントを探し出して吸着を試み、失敗した場合は自らの判断により少し重心位置をずらした吸着ポイントを改めて探し出して再トライします。無事に再トライでピック成功となった場合は、同商品の正しい吸着ポイントが学習・記憶され、以降はスムーズにピッキングがなされる仕組になっています(写真4)。
写真4: 画像認識技術によりベストな吸着ポイントの探索が行われる様子

写真4: 画像認識技術によりベストな吸着ポイントの探索が行われる様子

このように作業の正確性や柔軟性がより高まっておりますが、実作業目線でみると、やはりスピードが遅い!24時間365日、無人で稼働できますよといくら謳われても、その遅さに私は単純にイライラするのですが、今回そのイライラを解消してくれた、私の中でのスマッシュヒットとなった機種はTGW社の“Rovolution”という機種です(写真5)。

写真5: 一目惚れです

写真5: 一目惚れです

まずスピードが早く、実務面での運用に十分足りる速度が出ていると感じました。さらに、対象物の吸着面の形状の制約が少ない(フラット面である必要がない)、通常でも単品5kgまで吸着可能、優れたインテリジェンスを持つ(例えば、吸盤が3個あるため3個同時ピッキングが可能だが、オーダーが1個だけなのに意図せず3個吸着してしまった場合に、自ら判断の上で2個を捨てることができる!)等、スピード以外の面でも頭の良さを感じる優れものでした。

4.人間の気持ち

技術面では放っておいてもすぐに一般普及レベルの高みに達する段階に来ていると思います。導入事例が増えてきてコスト低減に成功すれば、爆発的な勢いで自動化機器の普及が進むのかもしれませんが、庫内作業の肝、つまり荷主・売主としての信用部分にかかわる作業の正確性(誤出荷を起こさない)に直結する工程(上記で述べたピッキング工程や検査工程等)への完全自動化には、もしかすると少し時間が掛かるかもしれないと感じました。
今回の訪欧に合わせて、欧州で医薬品のサプライチェーンをみている知人にインタビューする機会があり、期せずして彼から同様の話を聞くことができたのですが、「製造~出荷のとある検査工程は、これまで人間による完全目視で行ってきたが、そこを画像認識にAIを絡めた検査方式に置き換えようとしている」とのこと。取扱品が医薬品という点で絶対に間違いは起こせない(他商材でも同様ですが)という背景もある中で、自動化や最新技術による検査を信じきれない、何をもって信じれば良いのかが判らない、だからまだ最終チェック工程から目視検査を外せない、という話でした。最新技術による検査工程の結果を検査する最新技術による工程を追加して、それをさらに最新技術で検査して・・・と何重もの関門を設ければ間違いは起きないのでは?という冗談も出てきた程です。理屈では人間の目より機械の“目”が優れていることは理解しつつも、最終的には人間の目によるチェックを介したいという人間の気持ちをどう剥いでいくかが、最新技術導入の難しい部分の一つなのかもしれません。

看板に“ようこそ”と日本語がないのは少し寂しい

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仕事終わりには会場内で地元のビールを味わえます

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