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CES2018 で見た最新技術の動向 ②

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日通総研ニュースレター ろじたす 第35回(2018年3月19日号)

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【Logistics Report】CES2018 で見た最新技術の動向 ②

自動運転は昨年同様に一大注目分野で、自動車メーカー、通信サービス・インフラ企業、電気・電子部品メーカー、IT 企業など、大手からベンチャーまで入り乱れて関連の技術やサービスを展示していました。筆者もそれらのブースや自動運転に関するカンファレンスに出来る限り出席しましたが、“日本と違う”と感じたのは、「技術的には人間が運転するより確実に安全なレベルまで達している」と認識されていて、それをベースに話が次の段階に移っていたことでした。

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写真1: IBM 社の自動運転バスの Olli(オリィ)
同社の AI“ワトソン”が使われている

インテルの実験:ユーザー・エクスペリエンス

「自動運転車の方が、あなたの運転より上手いし安全」と言われたら皆様どう思われますか?やっぱりちょっとムカつきますでしょうか?しかし自動車事故の90%は人間によるミ スで起きており、科学的に判断して“人間が自動運転車より安全”と証明するのはかなり難しいようです。「科学的にそうなら、じゃあ運転は自動運転車に全部ま~かせよう」と現時点で言える人は凄いと思います。「そうは言われても…、漠然と納得できない…」 と感じられる方が大半ではないでしょうか?

自動運転車向けに CPU、通信チップなどを供給する世界最大の半導体メーカー、インテルもそう考えました。自動運転が「科学的に、技術的に安全だ」とこれ以上叫んでもしょうがない、普及のための次の“カギ”は、消費者が「安全だと感じる(信用する)」こと、そのためには実際に自動運転車に乗って、経験してもらうことだという結論に達しました。今風に言うと、ユーザー・エクスペリエンス(消費者による体験:しばしば“UX”と略される)ですね。そこで同社はアリゾナ州にある自社施設内で自動運転車を走らせ、地元住民に実際に乗車してもらい、その後感情がどう変化したかのデータを取りました。

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写真 2: インテルによるプレゼンの様子

結論から申し上げると、実際に乗車した大半の住民は“経験により”自動運転車を信用するに至ったそうですが、いくつか課題が残ったそうです。主な 4 点は以下の通り。

①判断:
人間は自分の方が正しい判断をすると思い込んでいます。実際に乗車し、しばらく体験すると、人間より自動運転車の方が正しい判断をすると理解するようになりますが、葛藤がしばらく続くとのこと(自分=人間を否定できない)。前述の通り事故の 90%は人間によるミスで起きています。また、多くの人間(ここではアメリカ人)は“自分は運転が上手い”と思い込んでいるとの調査結果が出ています。

②ルール:
自動運転車は事前にプログラム設定されたルール(交通法規など)を忠実に守ります。他に誰も走っていない片側 4 車線の高速道路でも、時速 40km の速度制限があれば時速 40km 以下で走ります。実際の社会では車の流れに合わせて運転し、多少スピードが超過することはあるでしょう。あまりに厳密過ぎるところに人間はイライラすることがわかりました。ただ、これを解決するために“たまには法を破れ”というプログラミングをするのは難しいでしょうね。

③情報量:
自動運転車から与えられる情報が多すぎてイラつくことがある模様。「右に曲がりますのでご注意下さい」や「トンネルの出口で突風の可能性があるので減速します」などのアラートを何度も繰り返し聞くと“分かっとるがな!”となるようです。人間は経験を積むことにより行為を省略(簡素化)することが出来るからです。ただこれは AI(人工知能)の機械学習によって改善しやすい項目だと筆者は思います。

④コントロール(制御):
1判断と重なるところもありますが、コントロールを全て完全に渡してしまう、という事実に人間の葛藤が起きるそうです。インテルの実験では消費者は後部座席に座り、運転席および助手席には誰も座っていませんでした。仮に暴走しだすと、後部座席から運転席に飛び移ってコントロールするのは困難です。このような状況では、最初にハンドルを切って(ちゃんと)曲がる行為にさえ、消費者は“ビビって”いました。

これらを克服するには近道は無く、消費者がどんどん試乗し経験して慣れるしかないのでしょう。進んでいると言われているアメリカでもインテルのような試乗機会はそんなに多くないはずです。日本でもユーザー・エクスペリエンス(UX)の機会が増えればいいですね。

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写真 3: 自動運転のシミュレータも体験できる

で、結局いつなのか?

「完全自動運転(レベル 5)が実現するのはいつなのか?」皆が知りたいこの質問、CES のカンファレンスでも当然出ました。答えはいつも「5 年後」です(笑)。2015 年に聞いても 5 年後(つまり 2020 年)、今聞いても 5 年後(2023 年)です。(実は筆者も一昨年日刊 Cargo さんのインタビューを受け「5 年後」と言ってしまいました。スイマセン…。)今年は 2018 年ですので、「2020 年代中盤以降」という言い方に変化してきました。

展示ブースの方では「レベル 4(高度自動運転)へ」という表記が複数あり、まずは現実的にレベル 3 からレベル 4 へステップアップしたいという企業もちらほら。

ちなみにウーバーのライバルでライドシェアを手掛けるリフト(Lyft)は「2021 年に実現したい」とカンファレンスで述べていました。ある調査でアメリカ、イギリス、シンガポール 3 ヶ国の消費者に聞いてみたところ、2051 年(33 年後!) と出たそうです。ただし、これまで歴史から自動運転のような破壊的な革新技術の登場に関しては、消費者の見識は当たらないことが多いそうです。

自動運転車のアーリー・アダプター(初期の導入者)は軍事産業と鉱山業だそうです。そりゃそうでしょう。公道を走りませんし、コストを気にしないでしょうからね。その次のステップに移ると普及のスピードが増し、ホッケースティック型の成長軌道に入るのだと思われます。

レベル 4 かレベル 5 かは分かりませんが、実際に自動運転車が公道を走るのは、「バスかトラック、もしくはタクシーなどの商用車が高速道路を走行する」のが先で、乗用車はそのまた先、というコンセンサスがありました。この点は車社会のアメリカでも日本と同じ考え方ですね。ちなみに以前ドイツで取材した時も同じ意見でした。となると、物流分野が自動運転の最初の適用者になるのかもしれません。期待したいですね。

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写真4: CES2018 のハッシュタグのオブジェ
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