今日のサプライチェーン・ロジスティクスの課題と最適化への対応
日通総研ニュースレター ろじたす 第26回ー①(2017年6月19日号)
【Global Report】今日のサプライチェーン・ロジスティクスの課題と最適化への対応
今日、企業のコスト削減が利益拡大に与えるインパクトは大きく、企業経営の横串組織を担うSCMやロジスティクス部門がその重要な位置づけとなってきています。一方で、荷主企業(主に製造業)のサプライチェーンやロジスティクスを取り巻く環境が厳しさを増していく中、拠点別・機能別・取引先別の個別最適では、企業コストを抜本的に削減するのは難しくなってきているのが現状です。
コスト削減とサービスレベル向上は、常にトレードオフの関係にあり、両方のニーズを満たすことは、SCMやロジスティクス部門を担う組織において大きな課題ともいえます。「戦略プロフィット的な役割と権限」「全社横串レベルでの経営スコアや業務プロセス・オペレーション・生産性」の可視化を図ることで、 “コストとサービス”で生じるギャップは、ある程度解消されるという事例も存在しますが、未だ多くの解決すべき問題があるのも事実です。
つまり、課題を端的に表すと、「サプライチェーンやロジスティクスに対して企業としての戦略がないこと」、加えて「サプライチェーン全体の可視化が十分でないこと」の2つに集約できます。
表:サプライチェーン・ロジスティクスの一般的な課題
出典:SCMの課題調査プロジェクトより日通総研作成
サプライチェーン戦略の考え方については、経営・事業改革を遂行するために、喫緊の未来構想をイメージしながら、具体的に何を実施し、どのような効果をもたらすべきかの青写真と、サプライチェーンのオペレーションに関連している全ての間接部門(例えば経理・財務・営業・企画・マーケティングなど)間の連携が必要となります。
つまり、関連する各部門に横串統制の権限を与え、サプライチェーンに密接に関係する部門間の共通課題を可視化し、統制範囲を拡大・強化することで、「企業利益向上」「収益に直接起因する販売の機会損失の低減」に繋げることが必要です。
次に、ロジスティクスの可視化について説明します。ここで言う“可視化”とは、実務のモニタリングに加え、経営スコアを部門管理者だけではなく、一般従業員にも“見せる化”する意味合いも含みます。「モノと情報」の流れをタイムリーに把握することはもちろん、「いつ・どこで・誰が・何をしているのか」、また、「どの程度の生産性をあげているのか」についても具体的に把握することが、戦略的にロジスティクスを進めるうえで重要な要素になります。
例えば、「原材料、仕掛品、完成品をどの輸送手段、もしくはどこの拠点を利活用し、どれだけのリードタイムとコストで流動させるのか」「製品の欠品リスクに対処すべくどの程度の在庫を抱え、どれだけの要員をそこに配置するのか」など、“見通しを立てること”が、戦略の中に具体的に盛り込まれなければなりません。
すなわち、現場のオペレーション部門と、経営・事業を支える間接部門において、タイムリーに情報シェアリングができる基盤を構築し、経営と事業、現場の“見せる化”が肝所となってくるのではないでしょうか。
今後、企業課題を克服するには、充足度の高い機能を補完する必要があります。特に、業務予測や計画などの「プランニング機能」がその役割を担います。製品の販売量(需要)と生産量(供給)の最適化と、需給数量を適正値にすり合わせることで、需給バランスが整い、販売予測から在庫欠品及び在庫過多を防ぐことに繋がります。必要なモノを必要な時に必要な量だけで調和させていくことが、課題を解決する最適化対策の近道であるといえるのではないでしょうか。
表:近年のサプライチェーン・ロジスティクスの予測精度
出典:製造業の需給・販売予測値調査より日通総研作成
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