違反事例から見る物流業界下請法注意点
日通総研ニュースレター ろじたす 第22回ー②(2017年2月20日号 )
【News Pickup】反事例から見る物流業界下請法注意点
下請法の運用基準改正で物流業界への影響は?
昨年末、下請法が50年ぶりに見直される(運用基準改正)というニュースがありました。運用基準改正の背景としては、近年、下請法違反に対する勧告件数は一桁にまで減少していたものの、反して指導件数は増加の一途となっており、平成27年度には5980件と過去最多となっていたことなどが考えられます。
しかし、このたびの改正により、物流業界には具体的にどのような影響があり、何を注意しなければならないのでしょうか。その点について、わかりやすく解説したいと思います。
昨年(2016年)12月14日、「下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」)に関する運用基準(以下「運用基準」)」が改正されました。この運用基準では下請法が求める親事業者の義務や禁止事項に係る判断基準、違反事例について記載されています。
今回の改正は、「支払い遅延」や「買いたたき」などの違反事例数を、現行の66から141事例に増加・充実させていることが柱となっています。
ここでは、物流(貨物運送)関係の役務委託で追加された違反事例の中から、注目すべき内容をピックアップしてご紹介します。
下請法第4条「親事業者の禁止事項」で規定している11行為類型の10番目「不当な経済上の利益の提供要請」に係る違反事例として、「親事業者は,貨物運送を委託している下請事業者に対し,当該下請事業者に委託した取引とは関係のない貨物の積み下ろし作業をさせた。」が追加されました。
一般的に貨物運送契約では、貨物の積み下ろし作業は、「車上受け・車上渡し」が基本です。この事例は、親事業者(発側元請)との契約で、「車上渡し」であっても、ドライバーが着荷主から乞われフォークリフトを借りて荷下ろしを行い、指定場所まで搬入するといった「荷役作業=付帯作業」を行った場合ではないかと思われます。
ドライバーの思惑から、「発側のお得意さん(着荷主)から頼まれたのに、『契約にないからできない』と断って心象を悪くしたくない」「着荷主のフォークマンの荷下ろしを待つよりも自分でやった方が速い」といった思いから「契約にない」ことでもやってしまうという事態になっているのではないかと推察します。しかし親事業者は、下請事業者とは「車上渡し」の契約条件なのに、このようにドライバーが勝手に契約外の荷役作業をやったとしても、法違反を問われかねないことになりそうです。
下請法では、相手方(下請事業者)の意思が基本的には考慮されないという特徴があります。下請法の条文を見ても、一切の留保なく禁止行為を定める建てつけになっており、当事者の認識次第で適用の有無を決める建てつけにはなっていません!公正取引委員会からすると、「形式違反でもアウトなんだから、ぶつぶつ言わずに違反を認めなさい」といったことが違反疑義調査の現場では起きています。
もうひとつ、禁止行為類型の11番目「 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し」に係る事例として「親事業者は,貨物の運送を下請事業者に委託しているところ,下請事業者が指定された時刻に親事業者の物流センターに到着したものの,親事業者が貨物の積込み準備を終えていなかったために下請事業者が長時間の待機を余儀なくされたにもかかわらず,その待ち時間について必要な費用を負担しなかった。」が追加されました。
これは、いわゆる「手待ち時間」に係る内容で、先ほどの「付帯作業」と同様、取引上弱い立場の下請事業者が、従来「料金は貰わず呑み込んで」いたことを、本改正で「対価をきちんと支払いなさい」と厳しく規制をかけています。
親事業者には、「下請事業者=単なるコスト」という見方や、親事業者側のある種の油断があり、それが結果的に「うっかり違反」を招いてしまうという側面があるため、現場の外注戦力調達担当者は、抜かりなく適正に日々の発注指示(発注書の交付)を心がけることが非常に重要であると考えます。
出所:公正取引委員会ホームページより
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