義烏の巨大卸売市場と、それを支える物流施設の開発状況
日通総研ニュースレター ろじたす 第8回ー②(2015年12月21日号)
【News Pickup】義烏の巨大卸売市場と、それを支える物流施設の開発状況
世界中からバイヤーが訪れる中国・義烏市場。その周辺開発物流施設の実態にも驚いた!
中国は上海のお隣浙江省の中央に位置する義烏市に、世界的に有名な日用雑貨の巨大卸売市場があります。そこは日本の100円均一ショップに並ぶ商品の、主な仕入れ先として有名です。
義烏市は日用雑貨のみならず、アパレルや食品などのさまざまな問屋が立ち並び、街全体が一つの大きな卸売市場を形成している、独特の雰囲気を持った街です。
今回は、義烏の巨大な日用品雑貨市場と周辺の開発地域の物流施設を見学してきましたので、その様子をレポートいたします。
巨大市場
今回見学したのは、義烏の中でもひときわ巨大な義烏国際商貿城です。世界のおもちゃのうち4つに1つはここで売られたもの、世界のクリスマスギフトの6割がここから出ていると言われます。市場内部は、1店舗当たりの間口が狭いデパートのような作りになっており、陳列されている商品は商談用の展示品です。
写真 1:市場内の様子
建物は5つの区に分かれて建てられており、それぞれ1区(床面積34万㎡)は玩具、インテリア雑貨等、2区(同60万㎡)は鞄、キッチン用品等、3区(同46万㎡)は文房具、化粧品等、4区(同108万㎡)は靴、下着等、5区(同64万㎡)は輸入品、寝具等を取り扱っています。
100円均一で買えそうな物から、豪邸に飾られていそうなインテリア用品や仏像まで、多種多様な物が販売されています。
ある店舗では、よく観光地で目にする地名入りのマグネットが販売されていたのですが、世界各国の地名入りマグネットが、限られたスペースに所狭しと並べられており、大変奇妙な光景でした。
各建物は4~5階建ての造りとなっていて、その中に全体で約6万店の雑貨店(ブース)がひしめき合いながら、170万種類以上の商品を取り扱っています。
また、世界中から1日に約20万人ものバイヤーが商談に訪れるとのことです。
写真 2:高価そうな装飾品の品々
写真 3:観光地名入りマグネットの展示
筆者が滞在していたホテルにも実に多様な人種の方が滞在しており、朝になるとバイヤーがロビーで現地コーディネーターと合流し、市場に向かう姿が多く見られました。
バイヤーは、各業者のブースに展示されている商品を見て商談を行い、商談がまとまると周辺の倉庫に手配をして配送、納品という流れになります。これだけ規模の大きい卸売市場なので、必然的に物流規模も大きくなり、さらに空港・駅・高速道路等へのアクセスが良いことから、義烏は中国東沿岸地域の重要な物流拠点として注目されています。
アリババグループをはじめ、近年中国においてもeコマースが急速に発展しており、国内輸送はもとより輸出入に対応できる設備が求められています。
そのようなニーズも後押しし、今、義烏の物流開発地区では大規模な開発が進められています。
2. 義烏の物流施設開発地区
2014年には義烏市からスペイン・マドリッドまで、世界最長1万3千㎞を超える貨物鉄道「義新欧鉄道」が開通しました。義烏は重要な物流拠点としての役割を担う、新たなシルクロードの出発点として、大きな盛り上がりを見せています。
特に、「義新欧鉄道」を利用した輸出入や、越境ECのための通関の効率化を図ろうと、大規模な保税区域の設置や税関との連携に力を入れているとのことです。
義烏の物流開発地区には、国内企業1642社、国際代理店1056社、フォワーダー100社、配送会社134社、海外のe-ビジネス企業100社以上、船会社18社が立地しています。そのなかにある、義烏港と国内小口貨物ターミナルを見学して来ました。
義烏港は、義烏国際商貿城に隣接し、大型の保税倉庫と税関施設、コンテナヤード(建設中)を有する港湾機能を持った陸上の物流施設です。
倉庫部分は建築面積35万㎡の3階建てで、40フィートコンテナが年間110万個捌ける能力を持っています。なお、倉庫内の見学は残念ながらできませんでした。
図 1:義烏(义乌)-マドリッド(马德里)間の鉄道(赤い点線)
出典:義烏商貿服務業集聚区(陸港新区)管委会資料
次に、大手小口貨物(宅配便)企業の、国内小口貨物ターミナルの見学に訪れました(外部への写真公開を禁止されてしまったため、文章のみで解説させていただきます)。
施設はできたばかりで新しく、大変きれいでした。見学時にはちょうど、入荷作業および小型・軽量貨物の仕分け作業が行われていました。
トラックバースには、トラック台数分のベルトコンベヤが敷かれており、荷台の近くまでラインが延びています。
トラックから降ろされ、各ベルトコンベヤに載せられた荷物は、倉庫内中央に設置されたメインのコンベヤに合流する仕組みです。しかし、処理が間に合わないためか、コンベヤ脇にはトラックから降ろされ、仮置きされた状態の荷物が山積みになっており、作業員が随時それらの荷物をコンベヤに流していきます。
また、各ラインのコンベヤとメインコンベヤの合流地点にも、それぞれ作業員が配置されていました。なぜそれほど人員が必要なのか不思議に思っていましたが、ほどなくしてその理由がわかりました。
メインコンベヤの状況に関係なく、各ラインのコンベヤからはどんどん荷物が流されてくるため、合流地点でメインコンベヤを流れる荷物とぶつかり、頻繁に荷物が地面に落下するのです。これは衝撃の光景でした。日本では考えられない光景です。
落下した荷物は、周囲に配置された作業員により、再びコンベヤへと載せられます。この作業を行うための人員配置が必要なのです。
日本の人件費を考えれば、なんとも贅沢な人員配置です。自動化(コンベヤの制御)のための設備投資と人件費を比較してみて、人を手当てした方が安価であれば、人手による対応には応用が利くというメリットがあるわけですから、そちらを選んでいる中国の人件費はまだそれだけ安いということでしょう。
また、仕分け作業では、小型・軽量貨物を扱っているためか、貨物を放り投げて作業を行っていました。これには再び衝撃を受けました。まさに「放り投げる」という表現がそのまま当てはまるような光景で、荷物を丁寧に扱わなければならないという意識がないと思わざるを得ませんでした。
今回の訪中では、他の物流企業の倉庫もいくつか見学しましたが、設備はどれも大規模かつ新設のためきれいで、WMS等の情報システムも導入されており、見たところ日本の物流センターとさほど変わりはありませんでした。今回見学した施設のみでの印象ではありますが、日本との大きな違いは、荷物を丁寧に扱うという意識がないことと、人件費が安いため人間系で対応している部分が多い、という点でしょう。
写真 4:義烏港の模型
手前の建物が倉庫、中央の高い建物がオフィス棟、奥が税関施設とコンテナヤード
今年の11月11日(アリババの大規模セール実施日)に、1日で912億元の売り上げを達成したアリババグループでは、今後5~8年の間に中国全国どこへでも24時間配送ができるよう、巨額の投資を行って物流網を構築しており、今後も中国のEコマースをめぐる物流は急激に発展することが予想されます。
貨物の取扱い方に対する意識を含め、数年後の物流施設の様子がどうなっているのか非常に興味深く、要注目です。
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