CeMAT Australiaで見た最新のマテハン機器
日通総研ニュースレター ろじたす 第2回ー②(2015年6月22日号 )
【News Pickup】CeMAT Australiaで見た最新のマテハン機器
これからマテハン技術の潮流はどうなるのか!?世界の動向を追ってみた
日本ではゴールデンウィーク中だった 5/5~5/7にオーストラリアのシドニーでCeMATオーストラリアが開催されました。CeMATは、マテリアルハンドリング及びロジステックス分野における世界最大の国際見本市で、ドイツのハノーバーを中心に世界7か所で開かれています。今回が初の開催地となったシドニーのCeMATに参加してきましたので、その様子をさっそくレポートしたいと思います。
CeMAT(http://www.cemat.de/home) は、3年周期で開催されるドイツのハノーバーの国際見本市会場のイベントを中心に、中国(上海)、オーストラリア(シドニー:今回参加したイベント)、インド(デリー)、ロシア(モスクワ)、ブラジル(サンパウロ)、イタリア、トルコの世界7か所で開かれています。
写真 1:会場入り口
展示プログラムは、「産業用トラック」「コンベヤ」から「包装装置」「コンサルティング」までマテハン機器/物流機器にかかわるものすべてといってよいかもしれません。
CeMATの出展企業は、ヨーロッパのメーカーが多くを占めており(一部オーストラリア製品、中国製品などもありました)、オーストラリア市場の開拓といった意味合いも強い感じでした。残念なことに日本企業の出展はありませんでした。
◆欧州と日本の思想の違い
マテハン機器というと日本では、『スピード』、『生産性』、『品質』が重視され、そういった機能を充実させることで競争が繰り広げられています。しかし、欧州のメーカーでは、『ルール遵守』、『安全性』、『機会損失最小化』といった考えが、スピードや生産性などより上位にきており、 如何に人間が使いやすいか、如何に機器を人間に合わせられるか、といった思想がベースになっている印象を受けました。
これには、『労働安全衛生上のリスク排除(保険負担の軽減も含む)』や『人間の動きを尊重し、最適化する』といった考えが徹底されている社会的背景があるのではないかと考えられます。
こういった思想が各メーカーの機器開発のコンセプトにも反映されており、“人の動きを管理する”、“機器能力が最大になるようなオペレーションを人間に課す”といったことではなく、人の自然な動きを前提として、それを支援できるようにすることが基本にある点が大きいのです。
また、今回テーマの一つとして掲げられているものに「Industry4.0」があります。この「Industry4.0」は、第4の産業革命と呼ばれ、工業のデジタル化によって21世紀の製造業の様相を根本的に変え、生産工程のデジタル化・自動化を現在よりも高度化させ製造コストを大幅に削減する、ドイツが官民一体となり総力を挙げて展開する施策です。
出典:Recommendations for implementing the strategic initiative INDUSTRIE 4.0
ドイツの電子機器メーカーや自動車メーカーが取り組んでいるスマート工場などはその代表例です。生産ラインが自分で考えて最適な動きを選択するのです。
例えば、作業者が近づくと作業者のスキルに合わせてラインスピードが変化する、作業者が間違った行動をすると自動的に機械が停止するなど、まるで機械が周りの環境をとらえて行動するといったイメージです。(日本でもトヨタのアンドンなどがありますが、状況に応じて機器の挙動が変わるといった制御までされている例は少ないと思います。)
これまで、機械はスイッチを入れたり、ボタンを押したりすれば、決められた動きをするものでした。しかし、「Industry4.0」では、このように周辺環境をキャッチして機器の挙動が変わるのです。そういったこともあるせいか、CeMAT ではセンサー技術を開発する会社が多く出展をしていました。
写真 2:フォークリフト用アンテナ
ヨーロッパを中心にこの考え方が 物流の世界に適用されてきていることを実感したのが今回の大きな収穫でした。
他の展示品を例に挙げると、フォークリフトが最大荷重以上のパレットを持ち上げようとすると、自動的にエンジンがストップしてしまうなどといった技術も展示されており、 加えてフォークリフトの構内での現在位置、速度、運搬貨物の重量、頻度、運転者情報などすべて一括で管理し、そのような DATA を KPI として活用するシステムとなっていました。
写真 3:各種分析画面
このような技術が進化していけば、将来は、物流センターでピッキングするときにもハンディーターミナルが必要なくなるかもしれません。
例えば、ラックや台車がセンサー機能、通信機能を持っていて、ピッキングするとラックはA商品が一つなくなったという情報を更新し、台車はA商品が一つ載せられたという情報を更新することで、誰が、どこから、何を、何個、どこにとったかがわかるのです。PICKという行為を行うだけで。
現在当たり前にやっている「バーコードをスキャンする、キーボードをたたく」などは、物流から見れば必要ない行為で、これらをなくせるかもしれません。物流は、決められたモノが、決められた数だけ、決められた場所から場所へ間違いなく移動できれば全く問題ないからです。
情報を”入力する/読み取る”のではなく、“自動的にとらえること”でさらなる効率化につながると考えられます。
◆今回のマテハン技術について
最後に忘れてならないのは、各技術開発を進めてく上で規格の問題は避けて通れないということです。どんなに素晴らしい製品でも、一部でしか使えない、他と連携できないものではあまり意味がなくなってしまいます。今後、ヨーロッパで先行している「Industry4.0」の思想を基にした製品が標準規格となり展開されるようになると、日本も追随するしかなくなってしまうかもしれません。 日本は規格作りといった面では、後塵を拝する傾向にあるからです。これからは、
- Industry4.0の考えがマテハン機器への導入が促進される。
- マテハン機器の挙動を追うことが物流の効率化、マテハン機器の高機能化につながる。
- 物流では、これまで車両・作業者・商材の KPI 取得が中心だったが、マテハンの挙動をとらえることでマテハン機器の効率性も評価される。
- 労働力不足の社会では、加速度的に検討が進む。
といった状況が起きてくることが十分考えられるのです。
日本のメーカーが工場のスマート化、物流のスマート化にどのように対応していくのか、使う側は何をすればよいか、しっかり考えなければならない時期が来ているのかもしれません。
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