外資系企業からみたグローバルマネジメント人材像
日通総研ニュースレター ろじたす 第21回ー③(2017年1月23日号 )
【Global Trend】外資系企業からみたグローバルマネジメント人材像
L本調査を行ったきっかけは、業界内外から日系LSP(Logistics Service Provider)のマネジメント人材スペックに対する危機感の声、そして私達が各国で出会う外資系のマネージャーから刺激を受けたことによります。調査結果をみて「やっぱりそうか!」と確認できた部分と、「なるほど、そうなのか!」と感心する部分とがありました。
まずは外資系LSPがマネジメント人材育成上で採っている基本方針と、実際のマネジメント人材像を下記の図で概観したいと思います。
「やっぱりそうか!」と確認できた部分は、方針としては「統一基準・オープン性」、人材像としては「高い教育レベル・ストレッチアサインメントの経験・自主性」を重視している点です。10年以上前になりますが、私が在籍した外資系グローバル企業でも正に同じでした。
一方、「なるほど、そうなのか!」と感心した部分は、マネジメント人材は基本的に内部登用を貫いている点です。我々は外資系の人材の流動性に関心を向けがちですが、下記のDHLのCSRレポートからもわかる通り、マネジメント人材は社内で選抜/登用しています。 内部登用ができない場合は、ヘッドハンターに頼むか、もしくは従業員の紹介で外部から適任者を見つけるという順番です。
図1:外資系LSPのマネジメント人材育成基本方針 日通総研作成
図2:DHLマネジメント職 内登用の内訳 DHL2014年CSRレポートより
もう一つ感心した点は、後継者育成ができない者はマネジメント人材にはなれない点です。オープン性が高い外資系LSPでは、Job Description(職務記述書)の添付が必要です。たとえば、香港のSCMマネージャーを社内公募します。その際、手を挙げたA氏に求められるのは、職務実績や能力に加え、Succession Plan(後継者育成計画)の提出です。つまり、A氏が担当している現ポジションにおいて「そのポジションの後継者を育てたうえで応募しなさい!」ということです。利己的出世欲が強い人が多いと見られがちな外資系ですが、グローバルカンパニーといわれる企業では、後継者育成という利他的精神を備えていなければ、マネジメント人材としては認められないのです。
私達がすぐさま欧米スタイルを採ることは難しいですが、この先、早急に①求めるグローバルマネジメント人材スペックを具体化して、それを社内公表する、そして②適う人材の棚卸を行い、③その選抜人材の不足部分を補う教育を行う必要があるのではないでしょうか。残念ながら、殆どの日系企業のグローバル人材育成のスタンスは、日本にいる人材(日本人)をどうグローバル化するかということに留まっています。一方、外資LSPを含むグローバル企業では、上述の方針の下で人材の自主性を尊重し、適任者を募ります。結果的に、そのスペックに適った人材が、たまたまアジア人・欧米人・アフリカ人他だったということです。また、躍進するアジアで人材を確保するうえでも、日本的な慣行に固執する限り、不利な立場に陥ることは明らかです。なぜなら、マネジメント職を目指すアジアの人材は、ビジネス界とのコラボレーションに秀でた欧米のアカデミック機関に積極的に進み、そこでマネジメント知識やSCM専門知識を習得しているので、自然と欧米式マネジメントスタイルに馴染んでゆくからです。
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