最新テクノロジーで成功を収める鍵は「前向きなチーム作り」
日通総研ニュースレター ろじたす 第16回ー①
【Logistics Report】最新テクノロジーで成功を収める鍵は「前向きなチーム作り」
当社開発の倉庫作業分析ツール「ろじたん」は、お蔭様でたくさんの引き合いを頂き、開発当初から携わってきた私も既に20を超える現場へ導入支援をさせていただきました。現場へ「ろじたん」を導入する際は、まずスタッフの皆さんに集まってもらい、「なぜ作業の記録を取るのか」「Androidアプリはどのように操作するのか」等を説明しますが、この説明会における現場の反応は面白いくらい2通りに分かれます。ひとつは「操作を覚えるのが面倒そうだな」「作業の記録を取るって監視されているみたいで嫌だな」といった“後ろ向き”の反応。もうひとつは「スマホのアプリで何だか面白そう!」「現場の改善に繋がるならやってみたい」といった“前向き”の反応です。
そして、この反応がそのまま効果の大きさに直結します。“前向き”な反応が返ってくる現場は、導入も計測もスムーズに進み、コンサルタントが間に入らずとも、計測結果を見て「こんな改善ができるのではないか?」といったアイデアが、スタッフから自然と出てきます。逆に“後ろ向き”な現場では、計測結果が安定しなかったり、計測したままで分析しなかったり、ひどいときは「スマートフォンは携帯したけれども計測は忙しくてできなかった」ということもありました。
ツールやITソリューションの導入で改善効果があるかどうかは、高度な機能うんぬんよりも、現場できちんと“良いチーム作り”ができているかどうかにかかっていると、心底痛感させられます。
これからの10年間は、人工知能やブロックチェーンなどのテクノロジーが物流業界を大きく“変える”と言われていますが、正確には、新しいものを「それって面白そう!」と前向きに取り入れて“変われる”物流事業者が生き残っていくのだと私は考えます。
皆さんの現場ではどうでしょうか。新しいことを受け入れられる前向きなチームを作れているでしょうか。
著:ロバート・キーガン
リサ・ラスコウ・レイヒー
[英治出版(2013年10月)]
発達心理学者ロバート・キーガンは「なぜ人と組織は変われないのか」の中で、組織が変わることの必要性・重要性を認識しているにも関わらず、実際の行動に移せない要因のひとつとして、リーダーが口に出していることと本音との間に、溝があることを指摘しています。仕事上は人材育成のためのプログラムや研修、業務評価などを推奨しながら、酒の場ではこんな本音がこぼれてくるそうです。「現実には、人間はそうそう大きく変われませんよ。30歳か35歳くらいになれば人間は完成してしまう。それ以降は微修正しかできないでしょう。我々にできるのは、せいぜい社員の長所を最大限に引き出すこと、できるだけ欠点の少ない人物を採用することだけです。」
しかし、この先入観は間違いであることが、最新の神経科学や心理学の研究により証明されつつあります。人間は“何歳になっても”変われる可能性がある。
「ろじたん」の導入でも同じことが言えます。監督者やチームリーダーが内心では「作業計測なんかしても変わらないよ」と思っていそうなときは、改善効果が見込めません。逆に、現場スタッフが最初は後ろ向きであっても、監督者・リーダーが「必ず変われる」という認識を持っていれば、単なる作業の記録でしかなかった「ろじたん」のデータが現場の会話・議論を生み、(時間はかかりますが)空気が変わってきます。そういった瞬間に立ち会えると、「物流コンサルタントをしてきてよかった」と思えます。テクノロジーは目まぐるしく変わっていきますが、物流の本質が「前向きなチーム作り」であることに変わりはありません。
「ろじたん」とは、スマホアプリとWebの連携により、倉庫内の作業時間を計測するツールです。
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