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【倉庫管理】AIやIoT時代を見据えた物流パートナー選定のポイント

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取締役 兼 リサーチ&コンサルティングユニット4
ゼネラルマネージャー

井上 浩志

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ごく普通に、AI やIoTという言葉を目にする時代となり、物流現場ではこれらを意識した管理レベルの底上げや自動化・少人化のためのロボット・テクノロジーの活用が不可避となっています。

このような物流環境の変化は、物流コンペなどによる委託先の選定にも少なからず影響を与えます。根幹となる委託先の評価・選定基準が大きく変わることはありませんが、一方で環境変化に合わせて少しずつ変えていくことも求められます。これまでの評価・選定基準を踏まえつつ、次世代物流を見据えた物流パートナーの選定について考えてみたいと思います。

委託先となる物流パートナーを選定するためには、一般的にRFP(Request For Proposal/提案依頼書)の作成を行います。自社の意思である「目指すべき方向性」を明確にすることが、良い提案を引き出す重要なポイントになります。RFPの作成ついては、物流事業者の良い提案を引き出すRFPの作成ポイントはこれだ!に記載していますので参考にして下さい。

これまでの評価・選定基準

提示されたRFPへの回答として、物流パートナー候補から提案があります。一般的には、各社が作成した提案資料(提案書)とプレゼンを受けて最終決定します。当社では、スタンダードな手法として、①委託費用、②提案依頼項目への回答、③パートナーシップの3つの軸で評価・選定することを推奨しています。それぞれを具体的に解説します。

1 委託費用

いわゆる支払物流費の金額による評価軸となります。オペレーションコストの比較も重要ではありますが、物流パートナーを新しく切り替える場合には、移行のための費用が発生します。考慮が浅い場合は、見落とすリスクがあるため注意が必要です。

例えば、準備期間に必要となる費用、情報システムの初期開発費用、設備の導入費用などが該当します。特にWMS(倉庫管理システム)が自社のシステムではなく、物流パートナーのシステムを利用している場合は、全面的なシステム切り替えとなるため、他のパートナーへ移管した際に、自社の要件が充足できることを確実にチェックする必要があります。

一般的に、委託費は業務習熟と共に削減できる余力が生まれるため、初年度の委託費・次年度の委託費など、切り分けて提案を求めることも有効となります。最終的には、イニシャルコストとランニングコストに分類を行い、3年契約であれば3年間での合計の委託費で評価します。

2 提案依頼項目への回答

RFPに記載した提案依頼項目に対して、優れた回答を行っているか否かが評価軸となります。具体的には、販売管理システムとWMSの連携方式やインターフェース構築の考え方、人的リソースの調達力、スタッフの教育方針や教育ツール、効率化のアイデアなどが該当します。更に、現実味のある実行スケジュールやリスクが生じた際の回避策、稼働前後の運用体制などを評価します。図表1は、実際に当社のコンサル案件で利用した提案依頼項目に対する回答評価フォームの例となります。

図表1 提案依頼項目に対する回答評価フォームの例

図表1 提案依頼項目に対する回答評価フォームの例

3 パートナーシップ

開示情報や提案依頼から提案までの付き合いを通じて、感じられた企業スタンス、組織力、実行力について、パートナーとしての資質が評価軸となります。提案依頼活動を通じて、「信頼できる」、「多くのノウハウを持っている」、「柔軟に対応してもらえる」など感じ取ることができます。一度契約をすると長い付き合いとなることが多いため、一緒にやっていきたい会社と感じるか否かは重要なポイントといえます。

4 最新テクノロジーへの対応力

冒頭に申し上げたとおり、労働力不足を背景に昨今の物流環境は激変しています。その変化に敏感に反応して、キャッチアップできる物流パートナーが不可欠となります。IoTを駆使して作業や設備の見える化を推進する企業も増えています。AIに関しては、管理面とオペレーション面での活用が始まっています。

管理面では、まだ一部の企業における活用に留まっていますが、日々の物量予測と最適人員配置の決定などに活用され始めています。オペレーション面では、AIを組み込んだロボットの活用が話題となっています。運搬やピッキング工程などの倉庫内でウェイトの高い業務を中心に自動化への取り組みが増えています。

ここ数年ですっかりメジャーになった商品の保管棚ごと運搬する方式を採用するロボットとして、ギークプラス社のEVE(イブ)、GROUND社のButler(バトラー)はご存知の方も多いと思いますこれらのテクノロジーは、高額な設備投資が必要となるため、現時点で導入できるのは限られた企業になると思います。一方で、技術革新のスピードはこれまで以上に早く、価格帯も含め多様なテクノロジーの登場が予想されます。

厳しいかもしれませんが、このような情報自体をキャッチアップしていない会社は、既に次世代物流のパートナー候補からは脱落しているといえるでしょう。情報収集の取り組み姿勢は、将来の物流パートナーとして信頼できる存在か否かの重要な判断基準といえます。AIの強みは学習で日々レベルアップすることですが、信頼される物流パートナーの条件も、学習による日々のレベルアップといえそうです。

労働力不足を背景とする劇的な生産性向上のためには、これまでのやり方からの脱却は不可避です。物流パートナーのAI、IoT、ロボットなどのテクノロジーへの適応力や対応力は、これからの物流コンペの重要な評価軸のひとつといっても過言ではありません。

まとめ

AIやIoT時代を見据えた物流パートナー選定のポイントは、これまで重視されてきた①委託費、②提案依頼項目への回答、③パートナーシップの3つの評価軸です。テクノロジーの進化により激変する物流環境の新たな評価軸として、④最新テクノロジーへの対応力も重視すべき時代が来たといえそうです。これらを総合的に評価して、次世代の物流も安心して任せることができるパートナーの選定が求められています。

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