2,126 views
公式x 公式facebook

NX総研の社長が語る、物流業界で働く魅力とは? ~ 廣島社長の経歴と新社会人の皆さんに向けたメッセージ ~

Avatar

NX総研編集部

記事メイン画像

はじめに

4月に新社会人となった皆様、おめでとうございます。数ある業界の中から物流業界へ飛び込んでいただいた皆様に向けて、物流会社で働くこととはどのようなものか、私自身のこれまでの経歴からいくつか参考になればと思い、本ブログへ寄稿いたしました。1980年代~2010年代の国際物流がメインとなりますが、皆様のこれからの社会人生活の参考になれば幸いに思います。

中近東エリアに夢中になった新入社員時代

私は1984年に日本通運に入社し、プラント資機材の輸送を専門とする海外プラント輸送支店に配属され、中近東向け海上および現地内陸輸送業務に従事しました。入社時から中近東勤務を強く希望していたため、のぞみが叶った形となります。入社翌年の5月には、1か月間のエジプト出張でアレクサンドリアから西方20㎞ほどに位置するEl Dikheila製鉄所までの内陸輸送立ち合い管理を担当しました。入社2年目早々の単独海外出張で何をすべきかわからなかった私は、出張前に課長にどのような業務か伺ったところ、「行ってみればわかる」と大変わかりやすいアドバイス(?)をいただき、不安な気持ちを抱きながら、現地に向かいました。

現地ではプロジェクトマネジメントを司るコンサル会社や他のサプライヤーの物流担当者から教えを受けることができ、工場建設の資機材の輸送管理に従事し、何とかやり遂げることができました。具体的には船からトラックに直接積み込まれた貨物を商品カテゴリ別に荷下ろし場所の指示を行う仕事です。限られたスペースの中で貨物を整理する必要があり、常にエリア内の貨物を把握することが重要だったため、7,000トン、数千個の貨物すべてをチェックし、レイアウト図通りに配置できなかった貨物のロケーション図を別個に作成しました。そのレイアウト図は帰国後、現場の置き土産として現地で大変役に立ったと後から担当者に聞き、モチベーションに繋がったことを強く覚えています。のちに上司から聞いたところでは、出発前荷主にご挨拶に伺った直後に、責任者の部長から電話があり「あんな若い人で大丈夫ですか」と言われていたそうです。

エジプトでの丁寧な仕事が目に留まり、その半年後には同じ荷主からの指名でイラクに長期出張(1年間)することが決まりました。Mosul Dam(下図参照)という水力発電所の建設現場で、発電機のテスト機材の輸出入輸送管理、保税対象機器の承認期間延長管理および工事現場のアドミ業務全般の担当です。エジプトよりさらに幅広く工事現場の事務を経験しました。ダム開発の現場を支える仕事として、現場事務所の現金出納や請求、支払指示、給与精算など各種の入出金事務や出退勤の管理、日本への各種の報告などを行い、ここで事務所運営の最低限の基本を学びました。事務所や宿舎の人の集まる部屋の目立つ場所にはサダムフセインの肖像写真が飾られており、月に一度の公安警察によるチェックでは写真が傾いていないか、表面が汚れていないかチェックされていました。当時のイラクは隣国のイランと戦争状態にあり、電話は盗聴、手紙は検閲され、テレックスは英語使用に限られ、テレックスやタイプライターのオペレーターを務めるには、公安警察の聴取の上ライセンスを取る必要がありました。ひどいエピソードですが、工事現場では下請け企業で働くフィリピン人が番犬として犬を飼っていましたが、なぜかイラク人のみに向かって吠える犬で、ある日工事現場に駐在する警官がライフルを持って現場事務所に現れ、我々の目の前で射殺したこともありました。
また、首都のバグダッドでは空襲警報も多く、週に一度くらいはイランからのミサイル攻撃がありました。私もバグダッド出張の際に一度だけミサイル攻撃に遭遇したこともあり(とはいえ5㎞ほど離れたナツメヤシ畑に着弾)、日常生活面では刺激が多い生活でした。

私を派遣していただいた課長は、イランイラク戦争開戦時のバグダッド所長で、イランからの攻撃機による空襲の経験がありました。この時は週一回といった貧相な攻撃ではなく、複数の攻撃機による爆撃で、爆弾の落ちた建物が爆発して崩れ落ちるような状況だったようですが、課長が帰国後お母様に話されたところ、ご経験された東京大空襲では、逃げ場の無い火災を引き起こす焼夷弾によるもので、バグダッドのような運さえ良ければ助かるようなものではなかったと言われたそうです。

Mosul Dam

写真:Mosul Dam
出所:国連開発計画(United Nations Development Programme)HP

Mosul Dam

地図:Mosul Dam
出所:Open Street MapにNX総研加工

フォワーディング業務と海外業務研修

イラク出張からの帰国後、横浜海運支店に異動しました。フォワーディング業務に約8年間従事し、韓国、台湾、欧米からの輸入品を取り扱っていました。東京港ではコンテナ化が進んでいた一方で、横浜港は古い在来船を扱うことも多かったのが印象的でした。
また、横浜での勤務期間中に海外業務研修で英国日通へ1年間の研修に行くことになりました。これまで出張に出向いていた中近東とイギリスでは現地の雰囲気や宗教、食文化には当然ながら違いがありましたが、輸出入業務の流れは大きく変わらないことが分かりました。イギリスは海運の発祥の地でもあり基礎は同じでしたので、日本で培った輸出入の知識をそのまま活かすことができました。また、当時からイギリスでは手続きに必要な帳票類の簡易化が進んでいたことを感じました。

1992年2月、ソビエト崩壊直後のロシアへ出張し、極東政府への支援物資輸送の代理店指導を実施しました。この際には、現地関係者とのコミュニケーションが輸送の迅速化に非常に重要な要素であることを痛感しました。ロシア国内向け鉄道輸送ではSLB(シベリア・ランド・ブリッジ)のように仕立列車で直行輸送することができず、輸送途上のターミナル駅ごとに各地からの貨車を繋ぎなおして列車編成するため、僅か1,000kmほどであっても10日以上かかることもありました。それを何とか短縮できないものかと、ターミナル業者や沿海州鉄道局、ナホトカ税関などあちこちに相談に伺い、最後にナホトカ・ボストチニ―貨物駅の副駅長にたどり着き何度か訪問して相談したところ、欧州向けSLBブロックトレイン(仕立列車)の最後部に国内向け貨物車両を連結し、途中で切り離していくというアイデアで解決しました。これで、競合する日系フォワーダー、米系シーランドを出し抜いてロシア国内向け高速鉄道サービスを行いました。

国際物流の深さを感じた中堅社員時代

1996年には国際物流の複合輸送グループで約5年間、アフリカや中央アジアの複合輸送の企画・営業に従事し、ルワンダやマラウイ、ブルキナファソ、中央アフリカなどへの食糧援助、紛争直後のコソボ向け仮設住宅輸送のルート確保や現地の輸送監督を担当しました。実際の輸送案件実施の都度、現地の輸送開始や終了時に訪問し、その足で次年度援助予算の対象国や通過国に出張し、トランジットに必要な手続きや必要な書類、輸送環境を調査しました。案件の多くは単発のスポット案件であり、国境通過の手続き、輸送モード、積み替え地などを都度検討し、隣接国間の情勢に合わせたルート構築が必要でした。こうした事前調査と企画をベースに営業を行いました。また、これらの多くは日本国政府の援助案件であったため、日本国の代理人としての自覚を持って取り組みました。これらの輸送では事前調査が必要であることから、海外出張も何度も経験しました。当時の特にアフリカや中央アジアなどの国々では、安全や通信の確保が最優先されます。そのため、航空券はルート変更や航空会社を自由に選択できるフルフェアのIATAチケットを手配し、ホテルも通信とセキュリティが確保できるグレードのホテルを手配する必要がありました。この執筆にあたりbeenというアプリで調べたところ、アフリカには計17か国、アフリカ諸国の31%に訪問したことを改めて知り、意外に多くの国を訪問したと思いながら、それでもアフリカ大陸の国の数の3割ということを合わせて知り、アフリカにはたくさんの国があると感じた次第です。

これぞ国際物流の面白さと感じた案件として印象的だったのはアフガニスタンへの輸送ルート構築です。当時アフガニスタンにはイラン経由で輸送されていましたが、両国間の関係が悪化し国境が閉鎖されてしまいました。そこで、イラン→トルクメニスタン→ウズベキスタン→アフガニスタン経由で輸送するルートを構築しました。4か国分の輸送手配と調整をすることは大変難易度が高かったのですが、上司と力を合わせさらに代理店の積極的な協力を得て、任務を果たすことができました。

国際物流の深さを感じた中堅社員時代

出所:白地図専門店にNX総研加工

海外現地法人の駐在

海外現地法人の駐在は2回経験しました。1回目は2001年のドイツ日通へ8年半の出向です。その間、ロジスティクス担当としてデュッセルドルフ支店から欧州日通に所属を変え、幅広い業務を担当しました。ちょうど2002年にユーロが導入されたことで、それまで国ごとに在庫拠点を抱えていた各顧客は、オランダに倉庫を集約される方針を取られました。この影響で、私が所属する支店の当時2拠点5.7万平方メートルあった配送センターの三大顧客が約2年おきにオランダに移転され、売上が大幅に落ちる大苦境が予測されました。しかしながら、関係者の努力によりその後様々な新規顧客を呼び込んで4拠点合わせて11万平方メートルを確保し、苦境転じて収益の大きな拡大を実現しました。当時は立ち上げの都度大変な思いをしましたが、ドイツ人スタッフと共にオペレーションを立上げた経験は大変思い出深いものとなりました。そして、ピンチはチャンスとよく聞きますが、実際にこういった窮地が支店全体のモチベーション向上につながることを実感しました。
2回目の駐在は2013年のオランダ日通出向(5年間)です。ありがたいことに、1回目のドイツでのディストリビューション・ロジスティクスの経験と海運経験を買われた形でした。在勤中、欧州とオランダで海運とロジスティクス部長の最大で4部長を兼務しましたが、オランダのロジ業務で変化が多く、そちらに注力することが多かったため、すべてに十分に力を注げなかったことが残念です。

管理職と経営職

2009年、1回目の海外駐在から帰国後、管理職として国際物流の複合輸送グループに戻りました。おりしも、リーマンショック直後の混乱期で、しかもドイツでは8年半もの間倉庫配送のみを担当し、それ以前も欧米のフォワーディングは経験が浅かったので、最新の海運フォワーディング事情に追いつくことが大変でしたが、それ以上に部下のマネジメント業務という新たな領域に苦労しました。これまでは一人で仕事に取り組むことが多かったためです。帰国して2年後2011年に経営職として海運事業部の複合輸送グループ専任部長を務めることになりました。帰国当初の部下の人数は十数名だったのですが、海外からの帰任者の受け入れ窓口になったこともあり、3年程度の間に最終的には30名弱の部下をマネジメントすることにすることになりました。基本的には、海上運賃の仕入れと営業と連携したプライシング、海運混載サービス企画に、過去携わったアフリカなど新たな複合輸送サービスの拡充など、この人数の増加に合わせた商品企画や新規営業を必死に行いました。領域を広げすぎたために組織の方針とベクトルが合わないことも生じ、マネジメント面での難しさを実感しました。

2回目のオランダ駐在後、2018年にはグローバルロジスティクスソリューション部の部長に就任し、トップマネジメントの思想に触れることも多く、経営戦略や部の方針を考える時間が増えました。また、医薬品の取り扱いに備えるべく海外拠点にGDP施設を設け、医薬品知識を持つ人財の確保を促進しました。その一方で組織上、海外現地法人に関しては統制することが難しく、部としてやりたいことと実際に行えることの乖離があり、苦悩したのを覚えています。

2022年にはNX総合研究所の社長に就任しました。NX総研のメイン業務であるコンサルタントという仕事は自分自身に経験がありませんでしたが、過去にNX総研や他のコンサルタント会社に仕事を依頼していた立場からおおよその仕事のやり方を想像できることが助けになりました。それに、中近東やアフリカ関係の業務では一人で顧客と代理店を相手に仕事をしてきたことが、コンサルタントの皆さんと同じような意識ではないかと感じられるところもあり、その当時の心持を振り返りながら取り組んでいます。そして、NXグループの一員であることを意識しながら、社員の皆さんが個々の能力を存分に発揮できるように努めているところです。

日本の物流についての見解

物流そのものはかなり定型化しやすいと海外の経験から感じておりますが、日本では定型化して業務を標準化することができていません。日本人は勤勉なため、物流部門があれば最高の物流サービスを築こうと一心に務めます。そのため、各社、産業ごとにカスタマイズが生じ、部分最適で終わってしまうのであろうと思います。一方欧米では、自分だけが頑張ってしまうと他の人にできなくなってしまう、悪い言い方になりますが最低限できればいいという考え、つまり誰でもができるような仕事にするために標準化が進むのだと思います。もちろん、標準化したうえで品質を上げていくこともできます。陸送に目を転じてみれば、世界的に海上コンテナが導入されて約半世紀が経っていますが、日本では完全な活用がなされていません。トレーラー輸送ではトラクターヘッドは貨物の積み降ろし中繋ぎっぱなしでその間待機しているだけです。欧米では、荷役中はトレーラーを切り離し、トラクターヘッドは別のトレーラーを繋ぎ走行します。さらに標準パレットの導入が中々進まず、未だに手積み手卸しするような平積みが行われているという実態です。日本のトラック事業者の生産性は欧米のわずか2分の1といわれていますが、この生産性を上げるためには徹底的な標準化、荷主企業ごとの部分最適化ではなく物流に関わる全産業で最適化が行われ、それと連動して国の主導によるインフラ、法整備、荷主の意識改革が重要となります。

おわりに

物流では、倉庫内の作業工程や輸送モードがいろいろとあり、その組み合わせで成り立っていることで、ある意味自由度が高いと考えます。また個別の作業工程や輸送モードそれぞれで生産性を上げれば全体が良くなるというものではなく、全てのパートを連動させること、欧米ではオーケストレーションといいますが、オーケストラで各楽器パートをハーモナイズさせるイメージで各輸送モードから荷主も含めてロジスティクス全体を無駄なく連動させることで最良の状態ができます。物流業界へ入られた皆様には全体で効率よく物流を構築することの難しさと面白さに興味を持って取り組んで頂けたら幸いです。そして、皆さんにもハーモニーやリズムを乱すことなくロジスティクスをオーケストレーションすることの醍醐味を味わっていただきたいと思います。

また、基本的に意欲があればどんな領域でも活躍できるのが物流業界の良いところだと思います。DXを含め工夫の余地がたくさんあるので、是非のびのびと様々なアイデアを盛り込んで頂けますと物流業界全体が盛り上がるのではないでしょうか。

ここに書いてない様々なエピソードもありますので、もし興味をお持ちの方がいらっしゃれば、可能な範囲でお話しすることもできます。 お気軽に声がけいただければ幸いです。

(2023年4月10日)

掲載記事・サービスに関するお問い合わせは
お問い合わせフォームよりご連絡ください

お問い合わせ

NX総研編集部が書いた記事

この記事の関連タグ

関連する記事

Pick Up

  • ろじたん
  • じょぶたん
  • どらたん
  • 物流eカレッジ

Contact

サービスや採用など、
まずはお気軽にお問い合わせください