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医療・物流の現場で必要度が高まるテント-その基礎知識を整理する

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シニア・コンサルタント

矢野 裕之

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はじめに

新型コロナウィルス(以降、「新型コロナ」という)に関するニュースは、毎日のように報道されています。緊急事態宣言の宣言・解除状況は都道府県によって異なるようですが、常に新型コロナについて意識する生活は、当面は続きそうです。この新型コロナについて、病院等における対応状況に関するTVニュースの映像では、テントを目にすることが多くなってきたように思われます。具体的には、テントが病院等の発熱外来用施設として使われる様子等が報道されるようになってきました。そして、このテントは、物流の現場でも活用されることも少なくありません。今回は、このテントに関する基本的な情報を整理してみたいと思います。

新型コロナ対応の現場におけるテントの活用

医療の現場におけるテントの活用事例としては、病院等の発熱外来用施設が挙げられます。発熱外来とは新型コロナのように発熱症状を示し、かつ他者に感染させる可能性のある疾病の可能性がある患者を他の患者と分けて対応するための医療機関を意味します。新型コロナの流行が深刻となるに伴い、この発熱外来を設ける病院が増えています。
ただ、発熱外来を設置する目的は、発熱症状を示す患者さんと他の患者さんとの距離を取ることにあります。したがって、発熱外来用施設は他の患者が受診する施設と別の建物にすることが望まれますが、病院等の敷地内に新たな建物を建設するのは簡単ではありません。そのため、この発熱外来用の施設として、テントを病院の敷地内に設置して使用されることがあります。

物流の現場におけるテントの活用

このテントは、物流の現場でも意外に使用されています。まずテントは、たとえばテント倉庫という形で、「短期間だけ倉庫が欲しい」、「繁忙期の間だけ倉庫を建てたい」といった要望に対応するために活用されます。また、特に近年は、災害時における自治体の物資拠点用施設を確保するための手段として注目されています。災害時には、民間企業の倉庫が空いているとは限らず、そもそも、倉庫が全く立地していない自治体もあります。ただ、公園や自治体庁舎の駐車場などのオープンスペースならば、確保できる自治体も多いことから、このオープンスペースにテントを設置して物流拠点とする方法は、既に過去の災害でも採用されています。たとえば東日本大震災では、石巻市が公園に自衛隊が設置した多数のテントを物資拠点とした例があります(図1)。また、平成28年熊本地震において、自治体の物資拠点運用を経験した物流事業者等にヒアリングした結果、「柱が多く、物資の搬出入口が限られる自治体庁舎等のオフィス型施設よりも、オープンスペースにテントを設置した方が物資拠点として使い勝手が良い」という意見が示されています。

図1 東日本大震災に使用された石巻市公園のテント倉庫

図1 東日本大震災に使用された石巻市公園のテント倉庫

出典)日通総研撮影

こういった新型コロナ対策の現場や物流の現場に限らず、テントは非常に幅広い用途に使用されている、我々に大変身近なツールです。ただ、身近なわりに、意外にその特性や、調達・使用にあたっての留意点等に関する情報は知られていないのではないでしょうか。以下では、このテントに関する基礎知識を整理したいと思います。

テントに関する基礎知識

医療・物流の現場で使用するテントについては、まず、専門的な技術が無くとも容易に設置できることが求められると思われます。そのようなテントとしては、まず、「ワンプッシュテント」、「イージーテント」などと呼ばれる、未経験者でも簡単に組み立てられる商品、いわば「簡易組立テント」というべきものがあります。このタイプのテントは天幕と骨組みが一つにまとまった上で折りたたまれており、設営時は、それを広げるだけでほぼ完成するようになっています(図2)。なお、下図ではテントの周囲は覆われていませんが、横幕と呼ばれるものを四方に取り付けることも簡単に行えます。

図2 簡易組立テント

図2 簡易組立テント

出典)「テント専門店ナンコー」HP

なお、この簡易組立テントのカタログをみると、様々なサイズのものがありますが、それらは購入用であり、レンタル用のテントのサイズは、在庫の関係で、3メートル×6メートルほぼ一択となるそうです。
この簡易組立テント以外に、エアテントも、組立が容易なテントと言えます。このエアテントとは、文字通り、エアすなわち空気を吹き込んで膨らますテントです。なお、エアテントは空気を吹き込み続けなければいけないというイメージがありますが、最初に空気を吹き込むだけで良いエアテントも多く販売されています。厳密には一度エアを吹き込めば永遠に膨らんでいるわけではありませんが、1週間程度で少し萎みはじめる程度だそうです。なお、気温が高い時の方が空気は膨張するため、気温が低くなるほど、萎みはじめるのも早くなるそうです。
さらに、先の「簡易組立テント」は、物資の高積みがしにくい、物資の濡損等を防ぐため、地面にパレット・ブルーシート等を敷く必要がある、強風への対応に不安がある等が課題になりますが、エアテントは、このような課題の解決にも有効です。
まず、エアテントのサイズには様々なものがあり、図3のように、かなり大きいものもあり、物資の高積みにも対応できます。

図3 エアテントの例

図3 エアテントの例

出典)日通総研撮影

また、エアテントは、地面に敷くシートとテントが一体化しているため、パレット・ブルーシート等を別に用意する必要はありません。さらに、このテントと一体化したシートに貨物等を置けば、それが重りとなって、強風にも安定させやすいのです。
なお、この強風時の安定度をさらに高めるためには、アンカーと呼ばれる固定具を使用する方法もあります。このアンカーの使用例を図4に示しました。

図4 エアテントにおけるアンカーの使用例

図4 エアテントにおけるアンカーの使用例

出典)アキレス社開設ページ(https://www.achilles-rf.com/tent/index.html

おわりに

テントは、よく目にするツールであり、知らない人の方が少ないと思われます。しかし、今回ご説明したようなことは、意外に知られていないのではないでしょうか。テントは、古くからある非常に身近なツールであり、決して、最新テクノロジーの産物と言えないかもしれません。しかし、新型コロナや災害といった、想定外のことが発生しやすい事態では、このような古くからあるツールが有効な場面も少なくないのは事実と思われます。そのため、このような古くからあるツールを十分に活用するために必要な知識が、より周知されることで、大げさかもしれませんが、社会全体としての、新型コロナや災害等の危機への対応力向上につながるのではないでしょうか。「最新のものが常に最善のものとは限らない」というのは、想定外の事態に対応する際に鉄則と思われます。

(この記事は2021年3月29日の情報をもとに書かれました。)

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