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安全管理の必要性

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コンサルタント

上田 実

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日通総研ニュースレター ろじたす 第28回ー④(2017年8月21日号)

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【Logistics Research】 安全管理の必要性

労働災害の防止は企業における責務であり、それを達成させるために多くの費用や時間を費やしている企業は少なくありません。安全管理を徹底したからと言って、直接的には利益の向上に繋がるわけではありませんが、ひとたび労働災害が発生してしまうと、従業員の尊い命が奪われることにもなりかねません。また、被災者の家族を含めた多くの人たちを不幸にするだけでなく、損害賠償費用や事業所の休業など、企業の経営に大きな影響を及ぼすことになります。さらには、長年培ってきた信用の失墜等、最悪の場合には、企業の存続危機をも招きかねないのです。

わが国では労働災害を防止するための法律として「労働基準法」から分離独立する形で、昭和47年に「労働安全衛生法」が制定されました。各企業がこの法律にしたがって労働災害の防止に取り組んだ結果、大きな効果が得られましたが、それでもまだ1年間に全産業で約116千人(平成27年)の死傷災害が発生しています(死亡災害は972人)。
ちなみに、本レポートをご覧の皆様に関係が深い物流業界の状況をみると、陸上貨物運送事業では13,885人、港湾運送業では284人、倉庫業では559人の死傷災害が発生しています。

図1:死傷災害の発生状況

図1:死傷災害の発生状況
出所:厚生労働省「各種総計資料」より日通総研作成

陸上貨物運送事業における労働災害の特徴としては、次の点があげられます。
①他産業に比べると労働災害の発生頻度が高い(度数率が高い)
※度数率:全労働者の延べ労働時間あたりの労働災害による死傷者数の割合
②労働災害が発生すると重い災害となりやすい(強度率が高い)
※強度率:全労働者の延べ労働時間あたりの労働災害による労働損失日数の割合

図2:度数率の状況

図2:度数率の状況
出所:厚生労働省「各種総計資料」より日通総研作成

このような労働災害の発生を防止する取組みについて考えてみると、これまで行われてきた取組みの多くは「災害が発生したら対策を実施する」という「後追い型管理手法」が基本でした。

施設の欠損や欠陥、機械の故障、また作業の手順や方法等その原因に係わらず、原因を追究し解消することで再発の防止に努めることに主眼がおかれていたのです。ある人は、これを「安全への取り組みは終わりのないマラソン」と例えました。何かの対策を施して効果をあげたとしても、別の原因によって新たな災害が発生する。同じことを繰り返せば、マンネリ化してしまい、対策の効果が薄くなる(従業員が注意を払わなくなる)こともあるのです。近年では、このような状況や、産業構造の変革や技術革新などに伴う危険性や有害性(リスク)の多様化を背景に、潜在的な危険性や有害性をあらかじめ発見し、それを除去したり、低減させる対策をとる「先取り型の管理手法」に取り組む事業所等が多くなってきています。これは「リスクアセスメント」と呼ばれる手法であり、事業者が自主的に行う事項として、平成18年の労働安全衛生法の改正時に、努力義務として規定されました。

一方、様々なハラスメントなどによる精神的な疲労や、長時間労働などによる肉体的・精神的ストレスに起因した事案も増えており、メンタル面へのケア(メンタルヘルスケア)についても取り組む必要が生じています。

また、建設業界などには、「1メートルは一命(いちめい)取る」という格言があります。たとえ1メートルの高さからでも、墜落の仕方や打ち所によっては命を失うことも起こり得るということです。法的規制が加わる「高さ2メートル以上の高所作業」以下であっても、油断をすると想像を超える災害が起きるという教訓です。

安全衛生水準を向上させるためには、施設の欠陥や故障をチェックし修理・修繕する等ハード的な対策を講じることは当然ですが、安全管理の必要性と重要性を従業員が十分に理解できるような活動や教育研修を、計画的に継続して行うことが大切です。これを実践するツールとして「危険予知活動」や「ヒヤリハット活動」、さらには「リスクアセスメント」等がありますので、積極的に活用して下さい。

職場での日常の安全衛生管理は地道な活動ですが、「目先を変えながら、繰り返し徹底して実行する」ことが遠回りにみえて実は最も実効性の高い対策なのです。

改善活動は基本7ステップと支援体制が成功への近道

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