ロット二極化と川下産業の変化
日通総研ニュースレター ろじたす 第30回ー②(2017年10月23日号)
【Logistics Report】ロット二極化と川下産業の変化
2017年4月に全国貨物純流動調査(以下「物流センサス」)の2015年調査結果が国土交通省より発表されました。この物流センサスは、1970年調査以来、5年に1回行われる統計調査で、今回が第10回となっています。
物流センサスは貨物を出荷する主要産業(鉱業、製造業、卸売業、倉庫業)の事業所を調査対象としています。年間調査と3日間調査との2種類がサンプル調査で行われ、集計結果は拡大推計した年間あるいは3日間の全体値として発表されています。したがって、荷主基準の物流センサスには、輸送機関の実績から把握されて毎年発表されている輸送統計とは異なった特徴がみられます。
この物流センサスから様々な事象を類推することが可能ですが、今回はその中から1点、もっとも特徴的と感じられた「出荷形態の二極化」について指摘したいと思います。この出荷形態の二極化とは①集約的な大ロット出荷と②小口化する小ロット出荷を指します。そして、この二極化は産業間の流動では、大ロット化がサプライチェーンの上流、小ロット化が下流で顕著になったとみられます。
具体的にみると、3日間調査結果の「出荷1件あたり平均出荷重量」(以下、平均流動ロット)の縮小傾向に歯止めが掛かったことが今回の調査結果の特徴です。長年縮小が続き2010年調査では0.95㌧/件まで低下したものが、わずかながら拡大に転じ2015年調査では0.98㌧/件となりました。
ただし、これはあくまで全体の平均値でみた場合であり、流動ロット帯別にみると、小ロットの割合が高くなっています。件数ベースで0.1㌧未満の流動ロットが全体に占める割合は、2010年調査の75.1%から2015年調査では79.2%へと拡大しました。
つまり、大ロットの部分でわずかながら件数が増えたことで平均流動ロットが増加に転じる一方、小ロットの件数も増加したため、大小の二極分化が進んだといえます。
次に、産業間の流動を2015年調査からみると、重量ベースでは製造業→製造業のウエイトが高く(図1、赤円)、件数ベースでは卸売業→小売業・飲食店が高くなっています(図2、黄円)。
図1:産業間流動量(重量ベース)
出所:物流センサス(2015年調査)
図2:産業間流動量(件数ベース)
出所:物流センサス(2015年調査)
これを2010年調査と比較すると、重量ベースでは傾向に変化はありませんが、件数ベースでは卸売業→小売業・飲食店の伸びが著しくなっています。この卸売業→小売業・飲食店の件数の増加が、小ロット化の大きな要因になっています。この変化は、卸売業においてサプライチェーンの川下産業の多品種少量販売を支える役割がより強くなっている可能性を示唆しています。
このように大ロットと小ロットに二極化し、特に小ロット化がサプライチェーンの下流で顕著になる中、代表輸送手段(最も長距離を利用する輸送手段)における平均流動ロットにも変化がみられます。
小ロット化が顕著なのが、貸切トラック輸送です。これまで小ロット輸送は宅配等の混載輸送が主流でしたが、卸売業→小売業・飲食店への件数が増える中で、恐らく大消費地等の地域内配送において、貸切トラックを使ったルート配送による店舗向け出荷が増加したものと筆者は推察しています。
これらの動向から、これまでの「卸中抜き」という流れは一段落し、小口仕分けやシステマチックな配送体制等、下流への業務支援を物流面で実現できた卸売業が勝ち残ったということではないかと考えられます。
このように、物流センサスをもとに、物流そして産業構造の変化を読み取ることができます。
物流センサスの詳細は、以下のHPでご覧いただけます。
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/butsuryu06100.html (2017/10/3現在)
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