負荷の大きい荷役作業、これからどうなる?
日通総研ニュースレター ろじたす 第7回ー③(2015年11月24日号)
【Logistics Research】負荷の大きい荷役作業、これからどうなる?
物流では「棚入れ」「ピッキング」「検品」「輸送」等、様々な業務が発生しますが、その中でも積替えや積込みなどの「手荷役作業」は、作業者にとって最も過酷な作業です。
車両への積卸しが手荷役の場合、トラックドライバーもそのような作業を嫌うことが多いといわれています。著しく高齢化が進む物流業界では、そのうち手荷役をする人がいなくなってしまうかもしれません。
人間の身体活動効率は、良好な条件で30%といわれています。
つまり「機械的な仕事に変換されない熱」や、「筋肉の静的活動」に70%のエネルギーが使われているのです。作業負荷を軽減させるには、まずこの静的活動のエネルギーを下げることが非常に重要となります。静的活動のエネルギーの最も代表的なものが、荷役作業で発生する「物を支え持つ」という動作です。
荷物を支え持つためには、手腕部の筋力はもちろんですが、背腰部にかかる力も非常に大きくなります。
参考として、下図に持ち上げ姿勢ごとの椎間板にかかる負荷を示します。腰を曲げて支え持つDの姿勢で、負荷が大きいことがわかります。
図 重量物の扱い姿勢と椎間板内圧比
特にこのDの姿勢で作業を行うことは労災の原因にもなり、Cの姿勢で行うとしても、長時間や多頻度作業、さらにはひねりなどの動作も加わると、けがによるリスクが大きくなります。誰もそんな作業はしたくありません。
荷役をできる限り発生させないようにする方法として、ユニットロード化があります。ユニットロードとは、荷物を荷役や輸送に適したまとまり・単位にしたもので、パレット貨物やコンテナ貨物がその代表的なものです。
ユニットロード化により、フォークリフトやクレーン等の機械で荷役ができるようになるため、作業者への負荷は非常に小さくなります。ただし、各物流拠点で荷役機器が必要となる点や、パレットやコンテナなどのユニット化資機材の回収管理など、以前から様々な問題が指摘されており、なかなか解決できません。
また、ほとんどの場合、最終消費者には、荷物はユニットではなく単体で届けられるため、ユニット化された貨物はどこかでブレークする必要があります。
写真左:スーツを着用し腰を曲げて保持
写真右:スーツが稼働し荷物が持ち上がった状態
そこで最近ではもう一つの方法として、ロボットスーツを活用した荷役が検討されています。複数社からそうした機器が販売、もしくはレンタルされていますが、基本的には背腰部の「曲げ・伸ばし」を補助する構造となっており、腰部にかかる負荷を脚部など、身体の他の部分に分散させて荷役するイメージです。
今後はこのようなスーツの補助により、作業負荷軽減が進むことも考えられます。また、荷役作業では継続時間(心拍数の推移などで評価)、荷物の形状(荷物-身体の距離、持ち手位置なども影響)、持ち上げ高さ等、各種要因により作業負荷が大きく異なってきます。
様々な荷物を取り扱わなければならない物流現場では、各要因が複合的に絡み合うため、人間の作業の補助のためには、より高度な技術が必要となってくると思われます。
物流現場における人材確保のためにも、荷役作業を軽減、なくしていくことは、大きな取組み課題となっているのです。
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