LogiMAT・CeBITを訪問して思うこと
日通総研ニュースレター ろじたす 第25回ー③(2017年5月22日号 )
【Special article】LogiMAT・CeBITを訪問して思うこと
「ろじたす」を最後までお目通し頂き、ありがとうございます。この「ろじたす」も発刊3年目に入ります。ロジスティクスの話題を平易にお伝えすることを目指してスタート致しましたが、執筆者の中には「こだわり」があり、譲れない部分もあるようで、当初の目論見とは異なる専門的かつ難解な内容の記事もあったかと思います。3年目からは、「平易」からワンランク上げて少し面白く、「クスリ」と笑える内容が散りばめられるとよいと思うのですが・・・。まさにロジスティクスの「読むクスリ」を目指したいと思っております。さてどうなりますか。引き続き、ご愛読のほどをお願い致します。
私の執筆当番は、忘れた頃にやってくる災害のようなもの。幸いなことに、3月中旬に、先端技術のドイツにおける展示会LogiMATとCeBITに「おのぼりさん」をしてきました。その内容について少しご紹介を。
日通総研では、3年程前から、物流の先端技術の情報収集とその応用や展開のために、世界中の主要な展示会を回ってきました。その内容は、時に「ろじたす」の紙面でも紹介してきたところです。今回の展示会の専門的な見地からの内容については他の執筆者に譲るとして、私は、ドイツの展示会と日本の展示会の相違点について触れてみたいと思います。
まず、少しくだけた内容から。ドイツの展示会では、東京ビックサイト等のイベントでよく見かけるコンパニオンがいない!ということ。少しばかり残念・・・。しかし、会場に入って5分もすると、その疑問は解消しました。ドイツの展示会の雰囲気は、訪問者も展示者もヤル気満々。各展示ブースでは、訪問者がスタッフを相手に熱心に質疑している姿が目につきました。片や、日本ではどうかというと、一般的にいえば、展示会を訪問する目的は、目の肥し、話のネタ作り(勿論、そうでない方もおられますが)。ドイツでは、日本のように客寄せ的なスタッフは必要ないということだろうと思います。
次に、日本企業の出展は、やはりモノの展示に力点が置かれているということ。CeBITは、モノを展示するというよりもIoTに関わる内容を中心としたものでしたが、日本企業は、ここでも「モノづくり」の展示に重点を置こうという気配が感じられました。欧米企業の場合は、個別の物流機器の先進性、優秀性を示すというよりも、物流に前後する生産、販売を視野に入れて、全体の効率性の追求を展示しようとしています。サプライチェーン全体の時間と距離、コストをどう圧縮していくか、特にその情報インフラに重点を置いているように思われました。「おのぼりさん」としては、日本の物流界における手作り感の強い、汎用性の薄い、もっといえば、お客様毎のお作法に則った物流では、グローバルな物流ビジネスの中では太刀打ちできないのではないか、という強い不安を覚えた次第です。今、日本では、お客様本位のサービスの宅配便が危機的状況に陥っていますが、eコマースの盛んなアメリカ、ヨーロッパでは、ここまでの状況にないようです。この背景には、消費者サイドを含め、ロジスティクス、サプライチェーンの考え方についての根本的な相違があるようです。
ところで、展示場ではUniversitätのブースが大変目立ちました。大学が企業と連携しながらも、独自のブースを作り、情報発信しています。日本のように産学官の連携といった大げさなことはいわず、「俺たちのやっていることを見てくれ」といわんばかりに、ビジネスの世界と至近の距離で先端技術を競っているように思われました。教育システムの違いによるところも大きいと思いますが、日本の大学に“ロジスティクス”、とりわけ理系アタマの“ロジスティクス研究”がもっと必要なのではないでしょうか。
とにもかくにも、「おのぼりさん」は、展示場の広大な敷地にバスが行き交うというスケールの凄さにいたく感動。日本では、かねてからMICE(Meeting, Incentive tour, Conference, Exhibition)施設の狭隘、不足についての問題が指摘されてきましたが、ドイツにおけるMICE施設の充実が自国の産業界の発展に大きく寄与している姿を見るにつけ、日本におけるMICEへの取組み強化の必要性をいたく感じた次第です。そんな中、安倍首相がCeBITを訪問し、日本の売込みに頑張っておられました。国会での教育施設問題の追及でお疲れのようでしたが、異国で見る日本国の首相が我々のために頑張って頂いている姿は、ひときわ頼もしく感じられました。願わくば、日本におけるMICEにもっと光を。
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