統計調査を現状認識の契機に
日通総研ニュースレター ろじたす 第5回ー③(2015年9月24日号 )
【Logistics Research】統計調査を現状認識の契機に
今年は『国勢調査』の年です。国勢調査は5年に1度行われる日本国内に住むすべての人と世帯を対象とした統計調査です。今年からオンライン調査も実施され、インターネット回答用IDが全ての世帯に配布されるそうです。このニュースレターが出る頃には、我が家も読者の皆様のお宅も、回答済みかもしれませんね。スマホでもOKだというのだから、なんとも隔世の感です。
さて、同じく今秋には、物流関連も公的な統計調査がいくつかあります。
5年に1度の『物流センサス(全国貨物純流動調査)』、『道路交通センサス(全国道路・街路交通情勢調査)』そして10年に1度の『近畿圏物資流動調査』といった調査が行われます。それぞれ特徴があり、物流センサスでは、貨物の真の発着地と貨物量・輸送機関・ルートを荷主側から把握し、全国の物流状況を俯瞰します。道路交通センサスでは貨物車など自動車の動きを全国的に捉えます。
近畿圏物資流動調査では、近畿圏での貨物の流動の他、物流拠点の数、今後の物流効率化の意向などを捉えます。これらの調査結果から、貨物の発着はどこが多いか、どんな区間やルートで貨物が輸送されているのかを把握し、全国および各地域でインフラ整備の規模やニーズを検討するための基礎資料とします。
例えば、物流センサスからみると、図のように出荷件数が年々増え、また出荷 1 件あたりのロット(重量)がどんどん小さくなってきています。
このような推移に伴う道路や物流施設へのニーズの変化が分析され、道路計画や都市計画等へと反映されていきます。
図:国土交通省『第 9 回 2010 年調査全国貨物純流動調査の結果概要』
パンフレットより
また、国勢調査が将来人口推計に使われるように、物流に関する統計調査も需要予測モデルなどに利用されます。国・地方とも財政逼迫の昨今、不要な公共投資を避けつつ、適正に物流インフラ整備を行っていくのに、基礎となるデータを正しく掴むことがとても大切となっています。
そのために、多くの方から回答を得る調査が実施されます。
ただ、社会的に重要だと言っても、回答する側としては統計調査に答えるためだけにデータを整備するのは大変な手間ですよね。
そこで、せっかくですので、統計調査を自社の物流を見つめ直す機会にされてはいかがでしょうか。
業務上、貨物のデータ提供を企業の方にお願いした際に、「軽い商品だから重さを量ったことがない」や「輸送事業者に任せているのでどんなルートかは知らない」という話を私もよく耳にします。
もちろん、普段の業務の中でそれらの情報は不要であろうと思います。
しかし、どうでしょう?
例えば、重さを知らなければ、自家輸送の燃費面でのロスを見過ごしている可能性があります。重さを確認することで、「商品と梱包や緩衝材を量ってみたら、意外と梱包や緩衝材が重く、これを簡素化・軽量化することでコスト削減ができた」といった気付きがあるかもしれません。
他方、「関係のない災害だと思っていたが、トラックを回す裏道が被災したので納品に影響が出た」ということが起こった場合など、輸送ルートを知っておくと対策しやすいでしょう。また、運行時間等を知れば「ドライバーにとって厳しい運行なので、いざ人手不足になったとき、自社がトラックを確保できなくなる」というように、回避策の必要性を見出すかもしれません。
統計で求められるデータは、通常業務とは関係がないかもしれません。しかし、普段意識しない部分や熟練社員や輸送事業者に依存してブラックボックス化している部分を「公的な調査への協力」という機会を使って明らかにされては、と思います。
改善への新たな発見もあり得るでしょう。
国勢調査の時に妻の誕生日を改めて確認する、なんて不届き者は私だけでしょうが、それはともかく、統計調査を再確認の契機として活用されることをお勧めします。
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